LNCrawler

1099話 悪い噂

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1099話 悪い噂

シファルさんが冒険者ギルドに依頼した結果が出たようなので、皆で冒険者ギルドへ行く事になった。

「おかしいわね。キャスと親しい冒険者とテイマーから、全く連絡がこないわ」

ランカさんは冒険者ギルドへ向かいながら首を傾げる。

「今日、もう一度連絡を取ってみたらどうだ?」

シファルさんの提案に、ランカさんが頷く。

「そうね。前は依頼で森へ行っていたから伝言を頼んだんだけど、帰ってきているなら会いに行ってもいいわよね?」

大通りを通って冒険者ギルドへ向かう途中、少し嫌な視線を感じた。

それを不思議に思っていると、ラットルアさんが私の手を握った。

「どうしたの?」

「んっ? 握りたくなっただけ」

ラットルアさんの返答に、お父さんが苦笑する。

2人の様子に首を傾げていると、今度は嫌な視線を強く感じた。

あっ、ラットルアさんはこの視線から守ってくれているのか。

「ありがとう。私は大丈夫」

お父さんも、皆もいてくれるからね。

「そうか、良かった」

私がお礼を言うと、ラットルアさんはホッとした様子で笑った。

「それにしても、なんなんだろうな」

お父さんが少し苛立った様子で周りを見ると、感じていた視線が消えた。

「嫌な感じね。バレるのが怖いなら、見るなって言うのよ」

ランカさんはそう言うと、溜め息を吐いた。

「ヌーガの言った事が正解かもな。そしてこの状況は、誰かが仕掛けてきたという事か」

シファルさんの呟きに、ヌーガさんが嫌そうな表情で頷いた。

冒険者ギルドに入ると、男性の怒鳴り声が聞こえた。

それに体がビクッと震える。

「大丈夫か?」

お父さんが私を心配そうに見る。

「うん。どうしたんだろう?」

怒鳴り声を上げている男性に視線を向けると、気まずそうな表情をした3人の冒険者に怒っているようだった。

「今の言葉は、王都の冒険者ギルドを侮辱している。証拠があるんだろうな!」

怒っている男性は、冒険者ギルドの職員のようだ。

かなり苛立っているけど、冒険者達は何を言ったんだろう?

「それは、でも、おかしいじゃないか! あんな子供が上位魔物をテイム出来るなんて!」

あれ?

もしかして私の事かな?

「テイムに年齢制限などない! そんな事も知らないのか」

「それは知っている! でも、子供だぞ。それが、アダンダラをテイムするなんて。絶対におかしい。何か卑怯な手を使ってテイムしたっていう噂もある!」

間違いなく私の事だ。

もしかして、冒険者ギルドに来るまでに感じた視線も、彼が言った噂のせいなのかな?

「ほう、卑怯な手か。それはどんな方法だ? そんな方法があるなら教えてくれ」

男性職員の言葉に、3人の冒険者は顔を見合わせる。

「それは、知らないけど」

「知らない? 知らないくせに、証拠もないくせに、ただの噂を信じて、我々が大切にしている冒険者ギルドを侮辱したのか」

男性職員の言葉に、彼の前にいる冒険者が慌てて首を横に振る。

「冒険者ギルドを侮辱しようと思った訳じゃない」

「冒険者ギルドとして下した判断に、お前達は『おかしい』と証拠もないのに騒いだ。しかも、我々が金で買収されたと言った! 侮辱していると思って当然だろうが!」

「先輩。先輩」

男性と冒険者達のやり取りを見ていると、小柄な男性がランカさんを小声で呼んだ。

「あら、リューガ。どうしたの?」

ランカさんは、チラッとリューガさんを見ると、小さな声で答えた。

「こっちへ。巻き込まれる前について来てください」

「ありがとう」

リューガさんの提案にランカさんが笑って頷くと、リューガさんは私達を見て小さく頷いた。

「行きましょう」

リューガさんの後を追って、冒険者ギルドの奥へ向かう。

途中で後ろを振り返ると、私に気付いた冒険者達が、笑って手を振ってくれた。

「彼らは噂を信じていないみたいだな」

お父さんの呟きに、私は笑顔で頷く。

「そうだね」

手を振ってくれた冒険者達に、小さく手を振り返すとリューガさんの後を追う。

「いらっしゃいじゃの~」

冒険者ギルドの奥にある会議室に入ると、ギルマスの相談役であるゴーコスさんがいた。

「お久しぶりです」

お父さんが挨拶すると、ゴーコスさんが笑って頷く。

「そうじゃな。魔物暴走の処理で忙しかったからの。まぁ、座って話そうか」

ゴーコスさんに促されて、皆が椅子に座る。

「お茶を用意します」

リューガさんはそう言うと、会議室の隅でお茶の用意を始めた。

「それで、何があったんですか?」

シファルさんがゴーコスさんを見る。

「『王都にアダンダラをテイムした者が現れた』と、他の町や村でも噂になっていたんじゃ」

まぁ、それは予想していた事だよね。

「それ自体は別に問題ないんじゃ。そうなる事はわかっておったしな。じゃが、その噂を聞いた冒険者の中に、気に入らないと思う者や自分のほうがアダンダラの主に相応しいと、勘違いを起こす者がおったんじゃなぁ」

呆れた様子で話すゴーコスさんに、皆も呆れた表情を浮かべた。

「そんな奴らが現れるかもしれないとは思ったけど……本当に現れたか」

シファルさんが溜め息を吐く。

「そうなんじゃ。そして、そう思った者の中には、アイビーとシエルの関係を壊すために動いた馬鹿と、奪ってやろうと動いた馬鹿がいたんじゃな」

あっ、馬鹿って言ってる。

「冒険者ギルドの職員に怒鳴られていた冒険者達もその馬鹿の仲間なのかしら? 彼があれほど怒るなんて、私は初めて見たわ」

ランカさんは冒険者ギルドの職員だったから、怒っていた男性と知り合いなのか。

それにしても、あの男性が怒るのは珍しいんだ。

「背が高くて体格が良かったから、凄く迫力があったよね」

「確かに、迫力があったな」

私の呟きに、お父さんが頷く。

「彼らは昨日、王都に着いたばかりの冒険者達ですよ」

お茶の用意が終わったのか、リューガさんが私達の傍に来る。

「彼らは、自分達より若い冒険者が上位冒険者になった事も、アダンダラをテイムした事も気に入らないみたいですよ。昨日は、貴族の子供だから上位冒険者になれたと言っていました」

そんな事で上位冒険者になれる訳ないのにね。

「あと、子供の父親が、自分の手柄を子供に譲った。それを冒険者ギルドは金をもらって黙っているとか、まぁ、ふざけた事をほざいていました」

「ありえないだろう、なんだそれ」

リューガさんの説明を聞いたラットルアさんが嫌そうな表情をする。

「彼らは上位冒険者? それとも中位冒険者?」

ランカさんの問いに、リューガさんが首を横に振る。

「下位冒険者への態度が問題になり、中位冒険者から下位冒険者に全員落とされたそうです。ちょっと問題になっていたチームみたいなので、カシメ町の冒険者ギルドの職員が、彼らが王都に向かったと知って、こちらに情報を送ってくれました」

「うわぁ、それって、問題を起こす可能性ありと判断されたからよね。いったいカシメ町で何をしたのかしら?」

ランカさんが嫌そうに呟くと、リューガさんが彼女に視線を向ける。

「俺もそれが気になったので、カシメ町の冒険者ギルドに問い合わせ中です。でも、王都に到着した日に問題を起こすとは思いませんでしたよ」

「そうね」

リューガさんが呆れた様子で言うと、ランカさんも呆れた様子で頷いた。

「昨日、王都に来たばかりなら、噂を流したのは奴らではないな」

お父さんの呟きに、ゴーコスさんが首を横に振る。

「遠くから奴らの様子を見たが、そんな度胸はないじゃろう」

「あれ?」

ゴーコスさんを見たランカさんが少し驚いた表情をする。

「ゴーコスさん、もしかして本気で怒ってますか?」

ランカさんの問いに、ゴーコスさんが笑みを見せる。

「アイビーが上位冒険者で問題ないと判断したのは、わしじゃ。噂を流した奴は、それに文句があるらしいからのう」

ゴーコスさんから強い圧を感じて、ちょっと体が引ける。

「あ~、これは……大変だわ」

ランカさんは小さな声で呟くと、ゴーコスさんから視線を逸らしてお茶を飲んだ。