1106話 自慢したい!
1106話 自慢したい!
私が呟くと、ゴーコスさんは私を見て微笑む。
「テイマーが、皆、魔物を家族として受け入れてくれるといいんじゃがな」
「あいつ等も、ミーナさんからテイマーの心得をしっかり学んだ筈なんだけどな」
ドゴアさんの言葉に、ゴーコスさんが溜め息を吐く。
「ミーナさんが、今の奴らを見たら、悲しむじゃろうな」
少し寂しそうに呟くゴーコスさんの肩を、ギルマスさんが軽く叩く。
「ところで、これはギルマスの思惑通りかの?」
ゴーコスさんが少し遠くを見たあと、ギルマスさんに視線を向けた。
「まぁ確かに、バスカとアダンダラを紹介すれば、他のテイマーも少しは乗ってくるとは思った。魔物が集まれば、アダンダラだけに視線が集まる事はないからな。それに、問題を起こしている奴らも動くかもしれないとは考えた」
ギルマスさんが含みのある笑みを見せると、ゴーコスさんも似たような笑みを浮かべる。
「結果はどうじゃ?」
「今はなんとも言えないが、上位冒険者が数名いない。彼らがあとで答えを持って来てくれるだろう」
ゴーコスさんとギルマスさんの会話に首を傾げる。
「ギルマスがヒスに声を掛けたのは、魔物を紹介する意味もあるが、アイビーの噂を流した奴らや不満を持っている奴らをおびき寄せる為でもあったのだろう」
お父さんの説明に頷いていると、ギルマスさんがお父さんを見る。
「王都を支えてくれている魔物達を、紹介する場を作りたかったんだ。まぁ、運が良ければ問題を起こしている奴らも出てくるとは思ったが」
ギルマスさんの説明にお父さんが頷く。
「そうだとしても、これは集まり過ぎじゃないかしら」
チョンとの交流に満足したのか、ランカさんがとてもいい笑顔でギルマスさんのところへ来る。
「まぁ、これは……」
ギルマスさんは、大通りに集まった魔物と、冒険者ギルド内にいる魔物を見て苦笑する。
「あぁなるほど。ここまで集まるとはギルマスも思っていなかったのね」
ランカさんが呆れた表情でギルマスさんを見る。
「そうなんだよ。俺はどうやら、テイマー達の気持ちを軽くみていたみたいだ。まさか、テイムした魔物を自慢したいテイマーがこんなにいるなんて……」
「今まで我慢に我慢を重ねてきたからな」
ギルマスさんの呟きに、ヒスさんが笑って言う。
「そうそう。私のデズの手柄なのに、今までは皆に自慢出来なかったのよ。それが解禁になったんだから、これは参加して、これまでのデズの功績を自慢するしかないでしょう」
ミミーナさんの宣言に、ヒスさんが頷く。
少し離れた場所にいたテイマー達も、ミミーナさんの話が聞こえたのか頷いている。
「あ~、そうだな。我慢はさせたと思う」
ギルマスさんの言葉に、ミミーナさんは彼に視線を向ける。
「私達を守る為だって事はわかっているから不満はないわ。仕方のない事よ」
「そう思ってくれているなら助かるよ」
ミミーナさんの言葉に、ギルマスさんはホッとした表情を浮かべた。
「あと、ゴーコスさん」
「なんじゃ」
「ミーナおばあちゃんは、悲しんでいないわよ。テイマーがテイムした魔物を疎かにしているとわかったら、間違いなく殴っているわ」
ミミーナさんがそう言うと、ゴーコスさんが目を見開く。
そして笑い出した。
「そうじゃったな。ミーナは、そんな性格じゃったな」
「そうよ。ミーナおばあちゃんは、ちょっと豪快な性格だったんだから」
ミミーナさんのおばあちゃんがミーナさんなんだ。
話の感じからテイマーだったのかな?
「あっ、いた! アダンダラだけじゃなくバスカもイッカクギもいるのか。凄い!」
嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる3人の冒険者の姿に、ギルマスさんの眉間に皺が寄る。
「来たか。はぁ」
「隣町の冒険者かのう?」
「あぁ、カシメ町に所属している上位冒険者だ。あの格好を見ると、王都に来たばかりか」
ゴーコスさんの問いに、ギルマスさんが呆れた様子で木々や土で汚れている格好の3人の冒険者を見る。
「あれ? もしかして、俺達は何かしましたか?」
ギルマスさんの様子に気付いた、3人の中で一番年上に見える冒険者がこちらに来る。
「お前らな、カシメ町の冒険者ギルドに連絡して、周りと調整してから来い! カシメ町から『冒険者に戻るよう言って欲しい、頼む』と連絡が来たぞ」
ギルマスさんの言葉に、カシメ町の冒険者達は首を傾げる。
「待ってくれ。俺達は冒険者ギルドに、王都にいると噂になっているアダンダラを見に行きたいと、ちゃんと伝えた。だから王都に向かう依頼が欲しいってお願いしたし、調整もしてもらったんだ」
「「えっ?」」
カシム町の冒険者の説明に、ギルマスさんとゴーコスさんが険しい表情を見せる。
「それは本当か?」
「あぁ、噂を聞いてすぐに冒険者ギルドに、噂の真偽を確認したんだ。それで本当みたいだって言われたから、所属している上位冒険者と中位冒険者がおそらく王都に行きたがるだろうから、調整して欲しいと言ったんだ。その間にも他の上位冒険者が冒険者ギルドで噂の真偽を確認しに来ていたからな」
ギルマスさんの問いに、真剣な表情で答えるカシメ町の冒険者達。
「調整を頼んで2日後に、すぐに出発して問題ないと返答が来た。だから、俺達はすぐにカシメ町を出発したんだ。王都に約1週間滞在して、その間に見られなくてもカシメ町に戻る事も伝えてある。他にも見たい連中がいたから、いつまでもズルズル王都に滞在するわけにもいかないしな」
「どういう事じゃ? 彼らの様子から嘘は言っておらんじゃろう」
ゴーコスさんの言葉にカシメ町の冒険者達は頷く。
「あぁ、そうだな」
そしてギルマスさんの返事に、カシメ町の冒険者達はホッとした表情を見せた。
「カシメ町の冒険者ギルドの誰から連絡がきたんじゃ?」
「俺に連絡してきたのは、カシメ町の冒険者ギルドのギルマスだ。ふぁっくすだったが、ギルマスの証で判子もあったから間違いない」
「ギルマス。カシメ町だけじゃなかったのよね?」
ランカさんの問いに、カシメ町の冒険者達が首を傾げる。
「あぁ、カシメ町の冒険者ギルドからは2回連絡が来たが、カシム町とカシス町からも連絡が来た」
ギルマスさんの返事に、カシメ町の冒険者は困惑した表情をする。
「俺達が所属しているカシメ町の冒険者ギルドに問題があるのはわかった。上位冒険者を騙して何がしたいのかはわからないが。でもカシム町とカシス町はどう関係するんだ?」
「なぁ、上位冒険者達が、所属している冒険者ギルドに連絡もせず移動したら、問題視されるのは……ギルマスになるよな」
カシメ町の冒険者達の顔色が悪くなる。
「やばい、戻ろう」
「あぁ」
カシメ町の冒険者達が慌て始めると、ギルマスさんが「待て」と声を掛ける。
「カシメ町の冒険者ギルドで、最近問題はなかったか?」
「あった。冒険者ギルドのお金を横領していた奴らがいたみたいで、少し前にかなりの数のギルド職員が首になった。あっ、奴らの仲間がまだギルド内にいたという事か……」
「その可能性があるな。上位冒険者を追い出して、その間に何かするつもりかもしれない」
「俺達すぐにカシメ町に戻ります。情報をありがとうございます」
ギルマスさんの説明に、カシメ町の冒険者達はギルマスさんに頭を下げる。
「ギルマス。カシメ町まで冒険者を送り届ける依頼は出ないかしら?」
ミミーナさんがギルマスさんに言うと、今度はカシメ町の冒険者達に視線を向ける。
「私のデズ、人が乗れるわよ。そして人の足より速いし、人を探すのも得意よ。見つけたカシメ町の冒険者を拾っていけるしね」
「隣町の冒険者ギルドが荒れると、こっちにも影響が出る。依頼はこちらで処理しておく」
ミミーナさんの提案に、ギルマスさんが笑って頷く。
「わかったわ。それで、どう?」
ミミーナさんはギルマスさんを見て頷くと、カシメ町の冒険者達を見る。
「「「よろしくお願いします」」」
カシメ町の冒険者達は顔を合わせて頷くと、ミミーナさんに頭を下げた。