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1110話 危険を知らせる鳴き方

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1110話 危険を知らせる鳴き方

コンコンコン。

「アイビー。話したい事があるんだけど、今、時間はあるか?」

夕飯を食べて部屋でゆっくりしているとお父さんが来た。

「どうぞ」

部屋に入ってきたお父さんは、ベッドで寝ているソラ達に視線を向けた。

「どうしたの?」

「少し、これからの事を話そうと思って」

お父さんの言葉に首を傾げる。

「今日、シエルやソラ達をお披露目しただろう?」

寝ていたソラ達が起き、お父さんを見る。

「うん」

「これから冒険者ギルドへ行く時や、大通りを歩いていると、シエルやソラ達に近付こうとする者が現れると思うんだ」

確かに、そういう人達が現れるかもしれないな。

「その中に、ソラ達を連れ去ろうとする者がいるかもしれない」

「ぷぷっ」

「てりゅ」

「……」

お父さんの説明を聞いていたソラ達が、嫌そうな表情をする。

「もちろん、そんな奴を見つけたら絶対に捕まえる。でも、ソラ達が、俺達から少し離れていたらすぐに反応出来ないかもしれない」

お父さんの説明に、私は頷く。

「そうだね。森の中では自由に動き回っていたけど、町や村の中だとすぐに対応出来ないかもしれないね」

「そうなんだよ。だからソラ、フレム、ソル」

「ぷっ?」

「てっりゅ?」

「ぺふ?」

お父さんの呼びかけに、ソラ達が体を傾ける。

「町や村の中では、俺達の傍から絶対に離れないようにしてほしい。出来るか?」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

お父さんの話を聞いていたソラ達は、少し考えたあと納得した様子で鳴いた。

「よしっ、あとシエルも俺達の傍にいてほしい」

「にゃうん?」

シエルがお父さんの言葉に首を傾げる。

「シエルの場合は、連れ去ろうとはしないだろう。でも、シエルを怒らせようとする者がいるかもしれない」

「えっ、どうして怒らせようとするの?」

私の問いに、シエルも不思議そうな表情でお父さんを見る。

「『アイビーがテイマーとして、アダンダラを制御できていない』と、騒ぐ為だ。つまり、アイビーからシエルを引き離す事が目的だ」

バタン。

床を叩く音に視線を向けると、シエルが不機嫌そうに尻尾を床に叩きつけていた。

「シエル、床が壊れるから落ち着こうね」

私はシエルの傍にいき、シエルの気持ちが落ち着くように頭を撫でる。

「シエル、落ち着け。怒らせるつもりはない、ただ、注意をしてほしいから言っているんだ」

「にゃうん」

お父さんの説明にシエルは落ち着いた様子で鳴いて、私の手に顔を寄せた。

「何もないのが一番だけど、噂を流した奴らがいる以上、警戒しておかないとな」

「うん、そうだね」

お父さんが心配するように、シエルを狙っている者がいるなら警戒はしておかないといけないよね。

「それとソラ、フレム、ソル」

お父さんがソラ達に視線を向ける。

「俺達に近付いてくる者の中に危険な者や怪しい者がいたら、鳴いて知らせてほしいんだ」

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

「ぺふっ」

お父さんの提案に、元気に鳴いて答えるソラ達。

「ありがとう。それじゃ、鳴き方を決めようか」

「鳴き方? いつもと一緒だと駄目なの?」

「うん。いつもと一緒だと、俺達を呼んでいるのか、危険を知らせているのかわからないだろ?」

「そうか。違いがないとわからないか」

お父さんの説明に納得していると、ソラ達も頷いている。

「それじゃ、鳴き方を決めようか。ソラ達で決めてくれてもいいぞ」

お父さんの問いに、ソラ達が顔を見合わせる。

「ぷす」

「てす」

「ぺっ」

ソラ達の鳴き声に、頬が緩む。

「えっと、ソラとフレムは、なんとも力の抜ける音だな。ソルは、もう少し変化が欲しいかな」

「ぷ~~ぷ」

「て~~りゅ」

あっ、今までで一番低い鳴き声だ。

「べっ」

ん~、ソルも頑張って低くしてくれているね。

ソラ達はそれぞれ鳴くと、お父さんを見る。

「いいな、今のでいこうか」

「ぷ~~ぷ」

「ぷ~~ぷ」

「て~~りゅ」

「て~~りゅ」

「べっ」

お父さんの了解が得られると、それぞれが何度も鳴き始めた。

皆の様子に首を傾げていると、扉を叩く音が聞こえた。

コンコンコン。

「アイビー、シファルだけど」

あっ、シファルさんだ。

夕飯の時にも帰ってこなかったから、心配していたんだよね。

「どうぞ」

「アイビー、大丈夫か?」

えっ、大丈夫って何?

怪訝な表情で部屋に入ってきたシファルさんが、ベッドの上で何度も鳴いているソラ達に視線を向ける。

「何かあったのか?」

ソラ達の様子を見たシファルさんが、心配そうに私とお父さんを見る。

「大丈夫だ。危険を知らせる時の鳴き方を決めたら、練習し始めただけだから」

これ、ソラ達の練習だったんだ。

「あ~、そうだったのか」

お父さんの説明に、シファルさんはなんとも言えない表情でソルを見る。

「それより、アイビーに用事があったのか?」

お父さんの問いに、シファルさんは首を横に振る。

「特に用事があるわけじゃないんだけど、アイビーの部屋からソラ達の鳴き声が何度も聞こえてきたから心配になったんだ」

シファルさんの説明に、少し前のソラ達を思い出して頷く。

「確かに。何をしているのかわからないと、不安になるね」

私の呟きにお父さんが笑う。

「悪い。扉を少し開けておいたから、外に鳴き声が漏れてしまったんだな」

ソラ達の鳴き声が不意に止まる。

皆を見ると、満足そうに頷いていた。

「シファル、あの冒険者は何を報告したんだ?」

あの冒険者って「面白い奴が引っ掛かった」といった彼の事かな?

「王都に店を持っている商人が、関わっている可能性があるという報告だった」

シファルさんの返答に、お父さんが首を傾げる。

「面白いと言っていたけど、商人に何かあるのか?」

「逃走した教会関係者と会っていた事がわかっているそうだ。尋問では、『教会関係者だとは知らなかった』と言い張ったみたいだけど、ギルマスは『おそらく嘘だろう』と言っていた。ただ、会っただけでは捕まえられないから、釈放になったみたいだけどな」

教会関係者か。

逃走した多くの者達は捕まったみたいだけど、いまだに一部は逃げているんだよね。

「教会関係者か。そういえば、逃走資金を得る為に、教会が隠し持っていた情報を売ったんだよな」

「ああ、そう聞いている」

お父さんの問いに、シファルさんが嫌そうに頷く。

「その情報の中に、魔方陣に関するものもあったな」

「あぁ。それが、どうしたんだ?」

お父さんの深刻な表情に、シファルさんが首を傾げる。

「テイムしている魔物をおかしくさせる道具を、王都にばらまくと言っていた商人がいるそうだ」

お父さんの説明に、シファルさんが目を見開いた。

「商人がそんな事を……。もしかしたら、隣町の騒動にも関わっているかもしれないな」

シファルさんの呟きにお父さんが視線を向ける。

「問題になっている商人は、隣町に支店があるそうだから」