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1111話 フォロンダ公爵と魔法陣

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1111話 フォロンダ公爵と魔法陣

ーフォロンダ公爵視点ー

冒険者ギルドから届いた書類を確認し、手が止まる。

「また、ずいぶんと思い切った事をしたものだな」

「何かありましたか?」

俺の手が止まった事に気付いたアマリが、俺へ視線を向ける。

「ギルマスが、テイマー達がテイムしている魔物を、お披露目する場を設けたみたいだ」

「あぁ、それは2日前の事ですね」

アマリの返事に、俺は少し驚いて彼女を見る。

「知っていたのか?」

俺の問いに、アマリが不思議そうな表情をする。

「はい。ご存知なかったのですか?」

「あぁ、知らなかった」

「そういえばご主人様は忙しくて、ここ数日はこの執務室から出ていませんでしたね」

「はぁ、執務室にこもって、今日で3日目か……」

貴族の屋敷から大量に出てきた、魔法陣を組み込んだマジックアイテムやさまざまな道具の後始末と事務処理で、帰る暇がなかったからな。

「で、魔物のお披露目はどうだったんだ?」

「大盛況でしたよ。私もこっそり見に行ったのですが、王都の冒険者ギルド所属のテイマー達のほとんどが集まって、テイムしている魔物を自慢していました。アイビーさんも彼らと一緒にお披露目していましたが、バスカとイッカクギもいたので、彼女一人に視線が集中する事はなかったですね」

「そうか。まぁ、一人に視線が集まらないように、ギルマスがバスカとイッカクギのテイマー達に声をかけたんだろう」

「そうでしょうね」

「あぁ、んっ? 待て」

俺はアマリに向かって目を細める。

「なんですか?」

「あんな忙しい時に、こっそり抜け出したのか?」

「はい」

俺の問いに笑って頷くアマリに、俺は彼女を見つめる。

「なぜ、俺を誘わなかった? 俺も見たかったんだが」

「急ぎの書類が大量にありましたから。それに、私とご主人様が2人とも抜けたら、誰が2人分の書類を裁くんですか?」

「まさか、アマリの確認する書類が俺に回ってきていたのか?」

「はい。ありがとうございます」

笑顔で礼を言うアマリに、俺は指で眉間を押さえる。

アマリを怒らせるような事は、最近していないよな?

出かける時は、ちゃんと護衛を2人以上付けているし。

「そんなに見に行きたかったのか?」

「はい」

怒らせたわけではなかったのはいいが、どうも釈然としないな。

もしかしたら、他に用事があったのかもしれないが、アマリの様子から聞いても答えないだろうな。

「そうか」

コンコンコン。

「クースでーす。いいですかー」

魔法陣研究所の主任をしているクースの声に、扉へ視線を向ける。

「どうぞ」

執務室に白衣を着た年配の男性が入ってくると、俺の執務机を見て顔をゆがめた。

「うわ~、凄い量の書類ですねー。休憩をしっかり取らないと、倒れちゃいますよー」

クースの忠告に、俺は思わず笑ってしまう。

「少し前に『いい加減に寝てください』と、助手に怒られていたクースにだけは言われたくないな」

「ははっ、今やっている研究が佳境だったからやめられなくてー、怒らせちゃいました」

クースの説明に、アマリが呆れた表情を浮かべる。

「研究に没頭しすぎて、倒れた事が何度もあるんですから、クースも少しは体を労わってくださいね。もう60歳なんですから」

「はははっ。これでも気を付けているんだよ。でも研究を始めると、気付いたら数日たっていることが多いんだよー。おかしいよねー」

「はぁ、助手達の苦労が目に見えますね」

アマリがクースにお茶を用意すると、ソファに座るように勧める。

「ありがとう」

「それでクース。今日はどうしたんだ?」

「魔法陣でわかった事があるんだー。それでフォロンダ公爵に見てもらいたい事があって、呼びに来たんだけど……」

クースが書類の山を見て、困った表情をする。

「大丈夫だ。急ぎの書類の処理は終わっている。それで、わかった事とは?」

「うん。捨てられた大地にある魔法陣が、最近になって動き出した原因がわかったかもしれないんだよー」

クースの説明に、俺は息を飲む。

「見てもらいたい事といったな。何を見るんだ?」

俺の言葉を聞いたクースは、アマリの淹れたお茶を一気に飲むと、嬉しそうに立ち上がった。

「研究所の庭に来てもらっていいかな? そこに準備したから」

クースの説明に、戸惑いながら頷く。

「わかった」

アマリを見ると、一緒に来る準備をしていた。

「行こうかー」

クースと一緒に執務室を出ると、2人の護衛騎士が俺に視線を向けた。

「魔法陣の研究所に行ってくる」

「「わかりました」」

「1人は執務室の護衛を、1人は一緒に来てください」

アマリの指示に、2人の護衛騎士は頷くと、1人が俺の傍に来た。

「頼むな」

「はい」

アマリは、執務室のカギを閉めると、残る護衛に何か指示を出してから俺を見た。

「行きましょう」

クースはアマリを見て頷くと、ゆっくりと歩き出す。

クースの歩調に合わせてゆっくり歩いていると、王城の庭でくつろいでいる木の魔物が見えた。

「そうそう、木の魔物のオートスにも協力してもらったんですよー」

クースの言葉に首を傾げる。

「オートス? とうとう王様は木の魔物に名前を付けたのか」

「はい、ようやくです。木の魔物に名前を付けていい許可をもらってから数ヶ月。ようやく決めたんですよー」

クースの説明に、思わず笑ってしまう。

「もう数ヶ月経っているのか」

友人の名前は安易に決められないと言って、なかなか決まらなかったんだよな。

「はい。王様がなかなか名前を決めないから、色々な呼び方をされていましたよねー」

「そうなのか?」

それは知らなかったな。

「あっ、気付いた」

クースが木の魔物に向かって手を振ると、木の魔物が根を左右にゆっくりと揺らす。

「そういえば、木の魔物に協力してもらったと言ったが、何をしてもらったんだ?」

「師匠には色々な質問に答えてもらいました」

「師匠?」

クースを見ると、当たり前という雰囲気で頷く。

「魔法陣について色々と知っているので、俺にとっては師匠です。オートスに、師匠と呼んでいいか聞いて、ちゃんと許可をもらいましたー」

「そうか」

まぁ、クースと木の魔物のオートスが納得しているなら、いいんだろう。

「フォロンダ公爵、あれを見てください」

クースの指すほうを見て、足を止める。

視線の先には、少し大きな魔法陣があった。

「あの魔法陣はどうしたんだ?」

「私が庭に描いた魔法陣です」

クースの説明に、俺は思わずクースの腕をつかみ、彼の顔をじっと見つめる。

「えー、どうしたんですか?」

俺の行動に、戸惑った表情を浮かべるクースに、ほっと安堵の息を吐く。

「魔法陣に魅入られてはいないな?」

「えっ、あぁそれで……」

クースは俺の問いに、納得した様子で頷いた。

「大丈夫です。あの魔法陣は、禁忌に触れていないから、魅入られる事はないですよー」

「禁忌?」

クースの言葉に俺は首を傾げる。

「あれ? まだ報告していなかったかな?」

クースが首を傾げて考え込む。

その様子を見て、俺は溜め息を吐いた。

「研究に没頭しすぎだ。最近は、報告書が1枚も出ていないぞ」

「あれ? そうだっけ?」

申し訳なさそうな表情をするクースに、俺はもう一度溜め息を吐いた。

「魔法陣について、わかった事をすべて教えてくれ」

「はははっ、えっと……いつから報告書を出していなかったかな?」

「教会で魔法陣についての大量の報告書と研究資料が見つかってからだな。助手からは少し聞いているが、魔法陣研究所主任からの報告書はまだ1枚も出ていない」

俺の説明に、クースが目を見開く。

完全に、報告書を忘れていたな。