LNCrawler

1122話 既に……

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1122話 既に……

「みんな、一緒に来て」

魔法陣について冒険者ギルドに説明に行っていたランカさんが、私達のところへ来ると、一緒に来るように言う。

それに頷いて、ランカさんの後を追う。

「えっ、待って。どうしてリョクまで来るのよ」

「いいじゃない。捨てられた大地にも影響がある事かもしれないんでしょ?」

リョクさんの言葉に、ランカさんが少し考えた後、頷いた。

「そうね。こっちよ」

冒険者ギルドの奥にある会議室と書かれた部屋に入ると、ギルマスさんと白衣を着た40代くらいの男性がシファルさんと話をしていた。

「連れてきました。リョクも一緒に」

ランカさんの言葉に、ギルマスさんがこちらを見る。

そしてリョクさんを見ると、呆れた表情になった。

「報告が済んだら、すぐに捨てられた大地へ戻ると言っていなかったか?」

「気になる情報を耳にしたから、確認したくなって。それより、私も一緒に話を聞いても問題はないかしら?」

「大丈夫だ」

「ありがとう」

リョクさんの礼にギルマスさんは頷くと、私達のほうを見た。

「ランカには言ったんだが、救難信号に応じてくれてありがとう。大切な命が失われずに済んだ」

ギルマスさんが、お父さん達に向かって頭を下げる。

「当たり前の事をしただけですよ。それで、俺達を呼んだ理由はなんですか?」

お父さんの問いに、ギルマスさんは真剣な表情でお父さんと私を見た。

「緊急依頼を『星』に出したい」

「緊急依頼ですか?」

お父さんが確認すると、ギルマスさんは頷く。

「まず、アイビーの噂の出どころなんだが、『フーファ道具店』の店員からだとわかった」

フーファ道具店は、オークスさんが魔法陣が組み込まれた道具を買ったところだ。

「なかなか噂の出どころがわからなかったのは、噂の流し方がうまかったと言っていいのかな? 店に道具を買いに来た冒険者達に、聞いた噂の相談という形で言っていたからなんだ。多くの冒険者は『バカバカしいただの噂だ』と言ったんだが、中にはアイビーが子供だという事で逆恨みした冒険者達もいた。そんな奴らが憂さ晴らしに『聞いた話なんだけど』という形で積極的に広めたようだ」

逆恨みか。

私が子供だから気に入らないんだろうな。

でも、これはどうしようもない事なのに……。

背に温かさを感じてハッとする。

隣を見ると、お父さんが心配そうに私を見ていた。

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

私の返事を聞いたお父さんは、私の頭を優しく撫でた。

「噂の出どころがわかったので、店内の捜査や店主や従業員から話を聞いた。そこで、別の問題が浮上した。少し前から問題になっていたので注意していたんだが、老舗の『フーファ道具店』が手を出すとは考えなかった。経営状況も良く、お金にも困っていなかったからな」

「問題になっているのは魔法陣を組み込んだ道具の事ですか?」

ラットルアさんの問いに、ギルマスさんが頷く。

「そうだ。最初に魔法陣を組み込んだ道具が見つかったのは約1ヶ月半前だ。買ったばかりの道具が急に熱を持ったので、調べて欲しいという下位冒険者からのお願いだった。持ち込んだ道具は盾で、内側の皮を剥いだら、盾の裏側に魔法陣が描かれていた。調べた結果、魔法陣が発動したのではなく魔法陣の描き方に問題があって、魔力が反発して盾に熱がこもってしまったらしい」

「熱を持っただけで済んだのは、良かったな」

シファルさんの言葉に、ヌーガさん達が神妙に頷く。

あれ?

魔法陣は正しく描かないと発動しないだけではなく、問題を起こす可能性があるの?

「最初の道具が見つかってから、ギルド職員に王都にある全ての店の調査をさせたんだ。その結果、1ヶ月以上かけて複数の店を営業停止にし、魔法陣に手を出した店主や関わった関係者を捕まえた。魔法陣について、国の方針が発表になっていないから、全て内密に終わらせた」

「国の方針を待っていたら被害が増えるから仕方ないか」

お父さんの呟きに、ランカさんが肩を竦める。

「私としては、早くルールを決めて欲しいんだけどね」

「もう少しだけ待ってくれ。そろそろ魔法陣についてのルールが決まる筈だ」

ランカさんが不満げに言うと、ギルマスさんが困った表情で言う。

「ギルマス、わかっているわ。ルールを決める為に、色々あるだろう事は」

「話を戻すぞ。魔法陣を組み込んだ道具の回収に当たっている職員から、回収対象の一覧にない道具が見つかったと報告があった。そして、同じ日に噂の出どころである『フーファ道具店』を調べていた職員から、隠し部屋の発見と未登録の道具を見つけたと報告があった。そして届いた道具を見て、同じ物だと判明したんだ」

「同じ日だったの?」

「そうなんだよ。不思議だろ?」

ランカさんの驚いた声に、ギルマスさんが頷く。

「すぐに道具に描かれていた魔法陣を調べたが、見た事のない文字や絵が使われていた為、どんな魔法が発動するのかわからなかった」

魔法陣に使われる文字や絵は沢山あるらしいから、仕方ない事だよね。

「フォロンダ公爵に協力を求めて、魔法陣研究所の研究員を派遣してもらって調べてもらう事になったんだが、魔法陣の事がわかる前に、2名の下位冒険者が魔物と遭遇した瞬間に死んだと報告があった」

「んっ? 魔物と戦ったのではなく遭遇した瞬間ですか?」

シファルさんが眉間に皺をよせ、ギルマスさんを見る。

「そうだ。正確に言うと、魔物に向かって武器を構えようとした時に死んだんだ」

「魔法陣と関係があったのですか?」

「あぁ、昨日わかったんだが『フーファ道具店』で売られていた道具の魔法陣は、別の魔法陣を発動させるためのものだった。そして、その魔法陣を発動させる為の魔力を、道具を持っている者から奪い続ける事もわかった」

「えっ?」

ギルマスさんの説明に、ランカさんから声が漏れる。

「下位冒険者が死んだ理由は、魔力切れだ。彼等は、魔物を見て武器に魔力を込めた瞬間に、魔力切れを起こした」

「待ってくれ、魔力が減っていれば自分で気付く筈です。体を重く感じたり、動きが鈍くなったりするから」

ヌーガさんの指摘に、ギルマスさんが首を横に振る。

「その点については、まだわかっていない。だが、彼らは気付かなかった。そして、就寝中に魔力切れを起こして死んだ冒険者が、今日、3人見つかった。全員が、『フーファ道具店』で買った道具を持っていた」

ギルマスさんの説明に、皆が息を呑む。

「依頼内容は?」

お父さんがギルマスさんを見る。

「問題の道具を見つけ、速やかに魔法陣を無効化して欲しい。アイビー、頼む」

ギルマスさんが私を見て深く頭を下げる。

「『フーファ道具店』を調べたんだったら、購入者はわかっているのでは?」

ラットルアさんの問いに、ギルマスさんが顔を歪めた。

「奴らは、購入者リストを全て燃やしていやがった。数人の購入者はわかったからすぐに回収したが、残りは誰が買ったのかわかっていない。売った数は110個で、回収できたのはたったの18個だ」

残り92個で、その数だけ命が危険にさらされているという事だよね。

「お父さん」

私の視線を受けお父さんは頷く。

「道具を見つける方法はあるのか?」

「魔法陣を使う」

ギルマスさんはそう言うと、15㎝程の白い丸い球を見せた。

「これは、魔法陣研究所で作られた安全な魔法陣を組み込んだ道具だ」

「安全?」

お父さんが不安げにギルマスさんを見る。

「あぁ、この道具で使われている魔法陣は、世界の魔力は使わず、魔石に込められた魔力だけを使って発動するんだ。だから使う者に影響を与えず、安全に使えるそうだ」

ギルマスさんの説明を聞きながら、15㎝程の白い丸い球を見る。

安全と言われても、ちょっと不安だな。