1129話 上位冒険者はやっぱりすごい
1129話 上位冒険者はやっぱりすごい
コンコンコン。
「アイビー、もうお昼だから起きようか」
お父さんの声に意識が浮上する。
「んっ? お父さん?」
起き上がると、部屋の中がすでに明るくなっている。
窓から外を見ると、太陽が高く上がっているのがわかった。
「……まだ眠たいなぁ。でも、起きないと駄目だよね……」
「ぷっぷぷ~」
のそのそとベッドから下りると、ソラが元気に私のところに来る。
「おはよう、ソラ。朝ご飯はもらったかな?」
私が起きない時は、お父さんが用意してくれるから大丈夫だと思うけど。
「ぷっぷぷ~」
「うん、良かった」
そういえば、部屋にいるのはソラだけだ。
フレムやソル、シエルはどうしたんだろう?
コンコンコン。
「アイビー、起きた?」
「お父さん、起きたよ」
扉を開けてお父さんが顔を出す。
「おはよう、アイビー」
「おはよう」
「ソラ達の朝ご飯は、終わっているからゆっくり準備をして食堂においで。ドールさん達が、お昼ご飯を用意してくれているから」
「うん、わかった。ありがとう」
もうお昼なのか。
顔を洗い、服を着替えて食堂へ行く。
食堂に入ると、お父さんが待っていてくれた。
「おはようございます。お腹は空いていますか?」
ドールさんがお父さんの前の席の椅子を引くと、私を見る。
「おはようございます。かなり空いています」
昨日は夕飯を食べる時間もなかった。
だから、さっきからお腹が空いて鳴いているんだよね。
「わかりました。すぐにご用意しますね」
ドールさんが食堂の奥へ行くと、数分後にいつもより少し多めのお昼ご飯を持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
「いただきます」
「待ってくれていたの?」
お昼ご飯を食べながら、お父さんを見る。
「あぁ、一緒に食べたほうがおいしいだろう?」
「ふふっ、ありがとう」
お父さんと一緒にお昼ご飯を食べていると、食堂にフレム達が来る。
あれ?
今度はソラがいないね。
「フレム、ソル、シエル。おはよう。今日のシエルはスライムの姿なんだね」
部屋にいなかった3匹に、朝の挨拶をすると、元気に私のところへ来る。
そして、テーブルに飛び乗ると、3匹でプルプルと震えた。
「なんだろう? 何かを伝えたいのかな?」
「ん~、そう見えるけど、どうだろう?」
私が不思議そうにフレム達を見ていると、お父さんも視線を向ける。
「何か伝えたいの?」
「てっりゅりゅ~」
私の問いにフレムは鳴くと、食堂の出入り口を見る。
これは「一緒に来て」と、言っているのかな。
「ちょっと待ってくれる? お昼ご飯を食べちゃうから」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
フレム達との会話を終え、残っているお昼ご飯を食べる。
その様子をジッと見つめるフレム達に、私はちょっと戸惑ってしまう。
食べ終わるのを待っているんだろうけど、食べにくいな。
「フレム、ソル、シエル」
お父さんが3匹に声を掛ける。
「てっりゅ?」
「ぺふっ?」
「にゃうん?」
「ずっと見られていると、アイビーが食べにくいよ。テーブルから下りて待っていてくれるか?」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「にゃうん」
3匹がテーブルから下りると、私はホッと息を吐く。
その様子を見たお父さんが笑った。
「「ごちそうさまでした」」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「にゃうん」
食べ終わった事がわかったのか、フレム達が騒ぎ始める。
「わかったから、もう少しだけ待って」
食べ終わったお皿をまとめていると、ドールさんが食堂に来た。
「そのままで大丈夫ですよ」
ドールさんの言葉にお礼を言い、フレム達に先導されて食堂を出た。
「フレム、何処へ行くの?」
「てりゅ~」
フレムは、私をチラッと見ると、玄関に一番近い部屋に入った。
「ぷっぷぷ~」
あっ、ソラはここにいたのか。
「ここは初めて入るな」
「うん」
「「おはよう」」
お父さんと話していると、ランカさんとラットルアさんが大量のカゴを持って、部屋に入ってきた。
「おはよう。そのカゴはなんですか?」
ランカさんとラットルアさんは、部屋に積まれてあるカゴに、持っていたカゴを置く。
私は、傍にあるカゴを手に取って、ランカさん達を見た。
「これは、アイビーに贈り物よ」
「えっ? 私に贈り物?」
ランカさんの言葉に、私は目を大きくする。
「そう。昨日のお礼ね」
昨日のお礼って事は、魔法陣に影響を受けていた冒険者達からなのかな?
「魔力を奪われて倒れた冒険者達はどうなったんだ?」
お父さんの問いに、私はランカさんを見る。
「大丈夫よ。数時間後に目を覚ましたみたい。今のところ後遺症もないみたいだし、数日ゆっくりすれば、依頼を受ける事も出来るようになると聞いたわ」
ランカさんの説明を聞いて、私はホッとする。
亡くなった方もいたので、もしかしたら数人は目が覚めないかもしれないと不安だったのだ。
「そうか、それは良かった。で、どうして贈り物なんだ? そんな習慣はないだろう?」
お父さんが傍にあるカゴを見る。
「そうなんだけど、助かった冒険者達が、言葉でのお礼だけでは足りないと考えたみたいね。アイビーは命の恩人だから」
「命の恩人ですか……」
それって、私ではなくソルとソラじゃないかな?
「これ、どうしよう」
部屋に積まれたカゴの量に、私は困った表情でお父さんを見る。
「中を見て使える物なら、もらっていいんじゃないか?」
お父さんの返事に、私は少し悩む。
「んっ? これはいらないな」
お父さんがカゴを開け、中身を確認すると、なぜか不機嫌になった。
「何か問題があったのか?」
そんなお父さんに近付き、ラットルアさんがカゴの中を見る。
「あぁ、はははは」
ラットルアさんの楽しそうな笑い声に、ランカさんが首を傾げる。
「どうしたの?」
「お礼文に、13歳の弟を紹介する一文がある」
「んっ?」
意味がわからず首を傾げると、お父さんがカゴから紙を取り出して、丸めた。
「これは必要ない」
「あらら~」
お父さんの態度に、ランカさんが呆れた表情をする。
「出会いは必要よ」
「まだ早い」
ランカさんの言葉に、お父さんは嫌そうな顔をする。
「あれ、こっちは魔石だ。えっと、上位冒険者のグーズからだ。『孫が世話になった、ありがとう』だってさ」
ラットルアさんが、カゴから1枚の紙を取り出すと、私に渡してくれる。
「ありがとう」
受け取った紙に書かれた内容を読む。
「おはよう、起きたんだね」
シファルさんの声に振り返ると、5個のカゴを持ったシファルさんが部屋に入ってきた。
「それも?」
「そう」
ラットルアさんの問いに、シファルさんは返事をして、カゴを下に置いた。
「アイビー、次に冒険者ギルドに行ったら、また注目されるぞ」
シファルさんの言葉に、私は首を傾げる。
「どうして?」
最近は落ち着いているのに。
「昨日のソルとソラの活躍が話題になっていた。黒のスライムの能力は、冒険者なら知っているけど、ソラの能力はまだ知られていなかっただろう?」
あっ、そうだった。
シファルさんの説明に、私はソラを見る。
「昨日は問題の道具の事でバタバタしていたから気にならなかったけど、落ち着いてみたら『あのスライムっていったい何だったんだ?』って事になったみたいだ」
「ぷっぷぷ~」
ソラの鳴き声に視線を向けると、シファルさんに向かって胸を張っていた。
その様子にシファルさんが楽しそうに笑う。
「そうだな、良い事をしたんだから、冒険者ギルドでも胸を張ればいいんだな」
「ぷっぷぷ~」
シファルさんとソラの会話に、私は思わず声を上げて笑ってしまう。
「アイビーの噂を流した奴らも捕まったし、魔法陣を組み込んだ道具の回収もたった1日で出来たし、これで安心ね」
ランカさんの言葉に、お父さんが頷く。
「今回の事で、冒険者達のつながりと、協力の良さを実感したよ。本当に」
「そうだね」
お父さんの呟きに私が頷くと、ランカさんが私達を見た。
「今回は、私もちょっと驚いたわ。冒険者達って、ちょっと自由なところがあるじゃない。普段はそれほど仲が良くないし。でも問題が起こったら、上位冒険者達を中心に、情報が一気に流れるんだってわかった。これはすごい事よね」
ランカさんの説明に私は頷く。
あの速さで情報が流れなかったら、間に合わなかった冒険者がいただろう。
「上位冒険者って、やっぱりすごいな」
お父さんやジナルさん達を見ていつも思っていたけど、王都の冒険者ギルドに所属している上位冒険者もすごい人達の集まりだった。
私も上位冒険者だけど、まだまだだよね。
もっと、いろいろ勉強して、たくさんの知識を得ないとな。