1131話 フォロンダ公爵と捨てられた大地5
1131話 フォロンダ公爵と捨てられた大地5
―フォロンダ公爵視点―
3日前、捨てられた大地を調査している冒険者から報告書が届いた。
「捨てられた大地の奥に異変あり、魔法陣かマジックアイテムなのか調べる必要がある。ポーションの補給をお願いしたい」というものだったため、ソラとフレムが作ってくれた青いポーションと赤いポーションを大量に送った。
「連絡は?」
翌日から、毎日届いていた連絡が途絶えた。
前にも、連絡が途絶えた事はあった。
そしてあの時は、調査に向かった冒険者全員が亡くなった。
「まだありません」
アマリの言葉に、俺は肩を落とす。
「そうか」
4日前、魔法陣研究所のクース主任から「大きな魔法陣が発動した恐れがある。でも場所はわからない」と報告を受けた。
主任補佐をしているチェッキーも同じ意見だという事なので、警戒はしていた。
捨てられた大地の奥にある魔法陣の可能性は考えていなかったが。
「王都の周辺の森なら、ある程度の対応は出来るが、捨てられた大地だと手の出しようがない」
「今は、調査に向かった冒険者たちの無事を祈るしかありませんね」
アマリの言葉に、俺は無言で頷いた。
調査に向かった冒険者からの連絡を待って5日目。
ようやく、冒険者たちが戻って来たという連絡を受けた。
「アマリ、行くぞ」
連絡を受けた瞬間、俺は立ち上がり、捨てられた大地から戻って来た冒険者たちがいる建物に向かった。
怪我は負ったが生きているという報告を受けたが、自分の目で確かめたかったのだ。
俺の執務室が入っている建物を出て20分ほど歩くと、捨てられた大地で調査や魔物討伐を行う冒険者たちのための建物がある。
建物内は食堂や休憩所、救護室にそれぞれがゆっくり休めるように個室が用意されている。
建物を守っている騎士に軽く挨拶をすると、冒険者たちが何処にいるのか聞く。
「全員、救護室のほうへ行きました」
「わかった、ありがとう」
急いで救護室へ向かう。
コンコンコン。
救護室の扉を叩くと、中から医者の補佐をしているダンサが姿を見せた。
「今、話が出来る者はいるだろうか?」
ダンサに聞くと、彼は頷く。
「寝ている方もいますが、起きている方もいます。話が出来る状態なのか確認しますので、お待ちください」
「わかった」
ダンサが部屋に入って数分後、扉が開くと、彼は「どうぞ」と中へ促した。
「ありがとう」
救護室に入って並んでいるベッドを見る。
眠っている冒険者もいるが、2人は起きて、俺に向かって小さく頭を下げた。
今回、調査に向かった冒険者は11人。
救護室にいる冒険者は8人。
少し嫌なものを感じながら、ルーダに声を掛けた。
「無事で良かった」
ルーダは俺を見て、泣きそうな表情をした。
「すみません。3人も失ってしまいました」
ルーダは謝ると、俺に向かって深く頭を下げる。
俺は、ルーダの肩にそっと手を置くと、首を横に振る。
「捨てられた大地はそれだけ危険な場所だ、何が起こってもルーダの責任ではない」
「でも、もう少し早く退避をしていれば……」
涙を流すルーダを、俺はそっと抱きしめ、ゆっくり背を撫でる。
今のルーダに、俺の言葉は届かないだろう。
時間が必要だ。
「おじさん。捨てられた大地の奥、まだ入った事がない場所の森が消えた」
ルーダの言葉に、俺は首を傾げる。
「消えた?」
「うん。あったはずの木々が、完全に消えていた。あれは、魔法陣が発動したせいだと思う」
ルーダの説明に、俺は息を呑む。
やはり、捨てられた大地にある魔法陣が発動したのか。
最悪だ。
「消えた森は、どれくらいの大きさだった?」
「わからない。あまりに広大で、でも、相当な広さだと思う。あと、消えた森の周辺にいた魔物が興奮状態ですごく攻撃的だった。動きも通常とは違って対応が難しかったし、致命傷を与えたのに数分間、暴れまわった」
「そうか、わかった。重要な情報をありがとう。もう休め。熱が出始めているぞ」
抱きしめていたルーダは、話しながら少し苦しそうにし始めた。
様子を見ると、熱が上がってきていた。
俺は、ルーダをベッドに寝かせると、様子を見ていた医者に視線を向ける。
「彼女を頼む」
「はい」
「おじさん」
ルーダに呼ばれ視線を向けると、彼女は真剣な表情をしていた。
「逃げる時、暴れまわっている魔物たちをジッと見つめているリュウの姿を見たの。今まで、そんな姿を見た事がなかった。捨てられた大地で何か起こるかもしれない」
「わかった。もう寝ろ」
ルーダの両目を片手で隠すと、彼女から寝息が聞こえてきた。
「怪我の状態は?」
ルーダの様子を確認した医者に聞く。
「怪我のほうはポーションで治っているため問題ありません。ですが、仲間を失った事が、心を弱らせているようです」
「そうか。赤のポーションを飲ませてみてくれ。あれは心を落ち着かせる効果があるみたいだから」
「わかりました」
救護室を出るとルーダの補佐をしているタダンがいた。
「ルーダから報告を聞きましたでしょうか?」
タダンの問いに、俺は頷く。
「捨てられた大地の奥で、魔法陣の発動による森の消失が確認された事と、周辺にいた魔物の異変について聞いた」
俺の説明にタダンは少し考える。
「ルーダと一緒に調査に行っていたフィンから話を聞いたのですが、今までにないほど広範囲の森が消えていたそうです。それほどの影響を及ぼす魔法陣がどうして今、発動したのかわかりますか?」
タダンの問いに、最近起こった事を思い出す。
「確実な答えではないが、王都を襲おうと教会が動いた時、各地にあった魔法陣が発動した。その発動した魔法陣の一部は、戦時中に描かれた魔法陣だった」
「えっ? そんな昔の魔法陣が発動していたんですか?」
タダンの驚いた表情に、俺は嫌そうに頷く。
「あぁ、教会の奴らは我々より魔法陣の事に詳しかった。そして、利用出来るものはどんなものでも利用した。木の魔物が命と引き換えに無効化してくれなければ、大変な事になっていただろう。だが、大量の魔法陣があの日になくなったせいで、魔法陣を維持するための魔力が大量に余ってしまったんだ。その一部が、捨てられた大地に流れている可能性が高い」
「魔法陣は大量の魔力にさらされると、発動してしまうものがありますからね。今回発動した魔法陣はそれだと思うのですか?」
「可能性の1つだ。他にも、魔法陣の一部が劣化により破壊、そのせいで暴走したのかもしれない。あとは考えたくないが、何かの条件がそろったために、魔法陣が発動したのかもしれない」
俺の言葉に、タダンが考え込む。
「原因はわからないという事ですね」
「そうだ。おそらく発動した魔法陣を見つけ出したとしても、発動した原因はわからないだろう」
今までも、自然に発動した魔法陣を調べたが、原因がわかったのは半分もない。
「そうだ、フィンと一緒にいた冒険者のチェイミーが言っていたんですが」
タダンの言葉に視線を向ける。
「『森が消えた傍に、大量のマジックアイテムがあったかもしれない』と言っているんです。逃げている時にチラッと見ただけなので、どれくらいの量なのかわからないそうですが」
捨てられた大地にあるマジックアイテムは、ほぼ戦時中に作られた物だ。
それが大量にあったという事は、そのマジックアイテムが魔法陣に影響を及ぼした可能性もあるな。
「最弱テイマー」を読んでいただきありがとうございます。
更新の再開が遅くなり、申し訳ありません。
本日より、最終章「捨てられた大地とアイビー」を更新いたします。
アイビーと仲間たちの活躍を楽しんでいただけれうれしいです。
前回までは木曜日の更新を隔週で休んでいましたが、これからは火曜日に変更となります。
よろしくお願いいたします。
ほのぼのる500