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1140話 黒のスライムの誕生

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1140話 黒のスライムの誕生

「でかいな」

ヌーガさんが、黒くなった木の魔物を見上げながら呟く。

「オカンノ村で見た一番大きかった木の魔物と同じくらいか。いや、それ以上か……」

シファルさんの言葉に、ラットルアさんが頷く。

「キーン」

「「「「「あっ」」」」」

「キーン」という音が聞こえて、みんなが小さく声を漏らす。

「この音、この木の魔物から聞こえてくる気がする。ただ場所は、上のほうなんだけど……」

ランカさんが木の魔物を見上げる。

さわさわさわ。

少し強い風が吹き、髪が揺れる。

「キーン」

「まただわ」

ランカさんが黒くなった木の魔物に少し近付く。

「枝と枝がぶつかった時に鳴るみたいだ」

シファルさんの言葉に視線を向けると、彼は枝を指した。

それに視線を向けると、また強い風が吹く。

「キーン」

本当だ、枝と枝がぶつかった音だ。

「あれ?」

私は、黒くなった木の魔物の事を思い出す。

そして、目の前にいる、黒くなった木の魔物を見て首を傾げる。

「どうした?」

お父さんが心配そうに私を見る。

「この木の魔物は、まだ生きているのかな?」

私の呟きに、みんなの視線が集まる。

「いや。多分、もう……」

シファルさんが言いづらそうに言って、私を見る。

「でも、強い風が吹いたのに崩れないよ」

私の指摘に、みんながハッとした表情になる。

「そうだった。黒くなってしまった木の魔物は、ちょっとした振動で崩れ落ちるんだった。この木の魔物は、まだ生きているのか?」

シファルさんが戸惑った表情で木の魔物を見上げる。

「ぷぷっ」

ソラが、シファルさんに向かって小さな鳴き声を上げる。

「ソラ、どうしたの?」

私はソラの様子から、シファルさんが言った言葉を思い出す。

「ソラ、この木の魔物は死んでいるの?」

「ぷっぷぷ~」

ソラの返事に、私は残念な気持ちで頷く。

「そっか」

ではどうして、この木の魔物は崩れないんだろう?

「キーン」

パキッ、パキッ、パキッ。

枝と枝がぶつかった音の後に、枝が折れる音が聞こえた。

「ぺふっ」

ソルは、木の枝の折れる音が聞こえたほうを見ると、ぴょんと木の魔物に飛び乗った。

「ソル、危ないよ」

今は崩れ落ちないけど、もしかしたら数分後に崩れるかもしれない。

「ぺふっ」

ソルはチラッと私を見ると、一度鳴き、もっと上の枝に飛び移った。

「キーン、キーン」

パキッ、パキッ。

また枝同士がぶつかる音の後に、枝の折れる音がした。

「ぺふっ! ぺふっ!」

ソルは、かなり高い場所にある枝に飛び乗ると、その場で何度も跳びはねる。

「ソル、危ないって」

ソルは、私の声が聞こえている筈なのに、跳びはねるのをやめない。

そして、とうとうソルの乗っていた枝が折れた。

ポキポキッ。

「ソル!」

ソルは私の呼びかけにチラッと視線を向けるけれど、すぐ傍の枝に飛び移ると、また跳びはねだした。

「アイビー、危ない」

お父さんに引き寄せられると、ソルの乗っていた枝が落ちてきた。

「おい、あれ!」

ヌーガさんの驚いた声に彼を見ると、ヌーガさんはソルが乗っていた枝を指していた。

「あれは、何……」

ランカさんも少し戸惑った表情をしている。

私が、ソルの乗っていた枝に視線を向けると、折れた部分から液体のようなものがゆっくりとあふれていた。

そして、ある程度の大きさになると下に落下した。

「ぷぎゃっ」

「「「「「えっ」」」」」

今、目の前で起こった事に、みんなが驚きの声を上げる。

「黒のスライム?」

お父さんの呟きに、私は頷く。

ボキボキッ。

また聞こえた枝の折れる音に視線を向けると、ソルが跳びはねていた枝が折れていた。

ソルは既に別の枝に乗って、跳びはねている。

「まただ」

お父さんの言葉に黒くなった木の魔物に視線を向けると、先ほどと同じように、折れた部分から液体のようなものがゆっくりとあふれ、そして落下した。

「ぶふっ」

「「「「「……」」」」」

みんなは黙ったまま、その光景を見つめる。

「黒のスライムって、黒くなった木の魔物から生まれるのね」

「ぺふっ」

ランカさんの小さな呟きに、頭上からソルの声が聞こえた。

「ぷっぷぷ~」

「てっりゅりゅ~」

ソルの様子をジッと見つめていたソラとフレムが、それぞれ鳴くと、黒くなった木の魔物の枝に飛び乗った。

そしてソルと同じように、枝の上で跳びはねだした。

ボキボキッ。

ボキボキッ。

ボキボキッ。

ソラ達の乗っていた枝から折れる音がそれぞれ聞こえると、しばらくして3匹の黒のスライムが生まれた。

「これは……待つしかなさそうだな」

シファルさんがソラ達を見ながら言う。

「そうだな。それにしても、すごい光景だ」

お父さんが言うと、みんなが無言で頷いた。

ソラ達の様子が見える場所に座ると、ランカさんがマジックバッグから少し大きなカゴを取り出した。

「最近、気に入っている焼き菓子があるの。食べながら待っていましょう」

ランカさんの言葉に、私はマジックバッグからお茶を淹れる為の道具を取り出す。

「手伝うよ」

傍にいたラットルアさんが、コップを用意してくれたので、私はお茶をコップに入れていく。

「どうぞ」

みんなにお茶の入ったコップを渡すと、ソラ達の様子を見る。

「いただきます」

ランカさんは焼き菓子を口に入れると、うれしそうに笑う。

「やっぱりおいしいわ」

「「「「「いただきます」」」」」

カゴの中から薄い黄色の焼き菓子を取ると、口に入れる。

一口で食べられる大きさの焼き菓子は、しっとりとした触感で、優しい甘さだった。

「おいしい」

「ぶふっ」

んっ?

隣から聞こえた聞き慣れない鳴き声に視線を向けると、黒のスライムがジッと私を見ていた。

「えっ」

いつの間にか、6匹の黒のスライムが私の傍に来て、ジッと私を見つめている。

「これは、どうすればいいの?」

お父さんに助けを求めたけれど、お父さんも困った表情をしていた。

「もしかして焼き菓子が欲しいの?」

私の言葉に、傍にいる黒のスライムが一斉に体を横に傾ける。

「可愛い」

一斉に動く黒のスライムに、私は思わず言葉がこぼれる。

「ぷっ。こんな時も、アイビーはアイビーだな」

シファルさんを見ると、彼は楽しそうな表情で私を見ていた。

「あっという間に、黒のスライムだらけだ」

ヌーガさんの言葉に周りを見ると、私達の周りには黒のスライムが大量にいた。

「森の中にいるスライムは、人を見ると襲ってくるというのが常識だったんだけど……この子達には、あの常識は当てはまらないみたいね」

ランカさんが、傍にいる黒のスライムを撫でながら言う。

「人を襲うスライムと、襲わないスライムの違いってなんだろうな」

ラットルアさんが、1匹の黒のスライムを抱き上げる。

「べうっ」

「がう」

ラットルアさんに抱き上げられた黒のスライムが鳴くと、傍にいた黒のスライムが鳴く。

それにつられるように、他のスライムも鳴き始めた。

「ぷふゅ~」

「ぶふっ」

「がうがう」

「ねぇ、スライムの鳴き方ってどうしてこう……力が抜けるのかしらね」

ランカさんが、黒のスライムの鳴き声を聞きながら笑って言う。

「ははっ、確かに。それにしても鳴き方にまとまりがないよな」

お父さんが、不思議そうに鳴いている黒のスライムを見る。

ボキボキボキッ。

枝の折れる大きな音が聞こえ、私は思わずそちらに視線を向ける。

「今の、すごく大きな折れる音だったね」

私の呟きに、シファルさんが黒くなった木の魔物の上部を指す。

「かなり大きな枝が折れたみたいだ」

シファルさんの指すほうを見ると、先ほどまでの枝とは明らかに太さの違う枝が折れていた。

そして、ゆっくりと折れた枝から何かがあふれていた。

「大きな黒のスライムでも生まれるのかな?」

枝からあふれたものが、大きく育つのを見る。

そして、私の周りにいる黒のスライムの約2倍ほどの大きさになると、落下した。

パシャッ。

「あっ、駄目だったわね」

ランカさんの言葉に、みんなが残念そうな表情をした。

大きく成長しすぎたのか、落下したものは、黒のスライムにならず、水がはじけるように四方に飛び散った。