1149話 以前とはちょっと違う防御用の魔石
1149話 以前とはちょっと違う防御用の魔石
「ぷっぷ?」
「てりゅ?」
「ぺふっ?」
ソラとフレムとソルが私達に気付くと、ちょっと動きを止めてこちらを見た。
そしてスッと視線を逸らすと、また食事を始めた。
「今、こっちを見たよな?」
お父さんの問いに、私は頷く。
「確実に見たね」
「で、気まずそうに視線を逸らしたのに、食事は続けるんだな」
お父さんの説明に、ランカさん達から笑い声が聞こえた。
「ソラ、フレム、ソル」
私の呼び掛けに、チラッと私を見る三匹。
「食べ過ぎて少し丸くなっているから、そろそろ食事を終わりにしようか」
私の言葉に、ソラ達は顔を見合わせる。
「ぷ~?」
ソラが私を見て体を傾ける。
「駄目、食べ過ぎたらまた……ぷっ。ふふっ、転がって移動する事になるよ」
ソラ達を説得している最中に、三匹が廊下をコロコロと転がっているところを思い出してしまい、噴き出してしまう。
「ぷっ?」
「てりゅ?」
「ぺふっ」
私の様子に、ソラ達は不審そうな表情を浮かべる。
「ごめん。それより、終わろう。ね」
ランカさん達は、私がソラ達を説得している間に、部屋のあちこちに転がっているポーションと魔石を次々と拾い、部屋の真ん中に集めた。
「さすがに量が多いな」
ラットルアさんが、転がっている最後のポーションを拾うと、小さな声で呟く。
「本当ね。でも、ソラ達の様子から、まだまだ作りそうよね」
ランカさんの言葉に、私はソラ達を見る。
確かに、ゴミの入っているマジックバッグをチラチラと気にしている。
これは目を離すとすぐに食べ始めるだろうな。
「アイビー」
お父さんに呼ばれ視線を向けると、お父さんの手には1つの魔石があった。
「どうしたの?」
「これ、前に作ってくれた防御用の魔石と似ているけど、少し違わないか?」
お父さんの手から防御用の魔石を受け取ると、ゆっくり眺める。
「以前の防御用の魔石は、赤と緑と青と黒が混ざっていたよね」
「あぁ、そうだったな」
私の説明に、お父さんが頷く。
「これは、魔石の大きさは同じくらいだけど、色の入り方がちょっと違うみたい」
私の手の中にある魔石は、色は前と同じだけど線状に入っている。
そして、赤と黒の線が太く、緑と青の線は細い。
別の魔石を手に取って確かめると、同じような色の入り方をしている。
「こちらの魔石を防御用と言っておりますが、どんな攻撃を防ぐのですか?」
ドールさんが興味津々に、魔石を見つめる。
「物理的な攻撃は、ほとんど防げません」
「そうなんですか?」
お父さんの説明に、ドールさんが不思議そうな表情をする。
「はい。ですが、魔法陣による攻撃は完全に防いでくれます」
「魔法陣による攻撃を……」
研究所の周辺には、木に刻まれた魔法陣や岩に刻まれた魔法陣が沢山あったらしい。
研究所跡地を調べた冒険者達が、その魔法陣の影響でおかしくなった事で発覚した。
そして、フレム達が作ってくれた防御用の魔石が、魔法陣から私達を守ってくれていた事もわかったのだ。
「魔法陣の攻撃から俺達を守ってくれていた事を知った時は、驚いたよな」
ラットルアさんの呟きに、シファルさんとヌーガさんが頷く。
「あぁ、防御用の魔石がない状態で研究所に行っていたら、最悪な事態になっていただろうからな」
お父さんが、防御用の魔石を見ながら言うと、ドールさんが少し考え込んだ。
「あぁ、なるほど。あの場所が潰れた事に、あなた方は関係しているんですね」
ドールさんがシファルさんとお父さんを見ると、シファルさんは笑顔になり、お父さんは肩を竦めた。
「フレム達が、防御用の魔石を作ったって事は、捨てられた大地に行くなら必要だと思ったって事よね?」
ランカさんが魔石を1つ手に取ると、神妙な表情をする。
朝、皆で話し合っていたのは、ポーションと魔石を作る為だったのか。
ソラ達も、捨てられた大地へ行く準備をしてくれているんだね。
「ポーションも魔石も、ソラ達の様子を見ている限り、まだまだ必要だと思っているみたいね」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
ランカさんの言葉に賛同するように、ソラ達が鳴き声を上げる。
「そうか。必要なのか」
お父さんが呟くと、少し考える。
「ソラ、フレム、ソル」
お父さんに呼ばれた3匹は、お父さんを見ると体を傾けた。
「あと、どれくらい作るつもりだ?」
お父さんの問いに、ソラ達は部屋の中央に集められたポーションと防御用の魔石を見る。
「今ある数の倍くらい?」
お父さんの問いに、3匹とも無言で答える。
「3倍? 4倍? えっと、5倍?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
お父さんの5倍という言葉に、ソラ達が鳴くと、お父さんもシファルさん達も驚いた表情をした。
「5倍なの? えっ、ここにはポーションが87本あるから、5倍で435本? そんなに必要だと思っているの?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
「そうか。他の冒険者達の分もあるんだな」
ラットルアさんの言葉に、ソラ達は無言で返す。
「これ全部、私達の為のポーションと防御用の魔石なの?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
私の問いにうれしそうに返事をするソラ達に、お父さん達がポーションと魔石を見る。
「捨てられた大地で何があっても生き残ってやると思っているけど、ソラのポーションが400本以上必要だと言われると、恐怖を感じるわね」
ランカさんの呟きに、ソラ達が不思議そうな表情をする。
「ポーションや魔石を作ってくれるのは、本当に感謝しているわ。でも、これだけの数が必要だと、ソラ達は考えているんでしょう? それを考えると怖くなるじゃない」
ランカさんの説明を聞きながら、私は頷く。
何かあった時の為の準備だけど、ソラのポーションの効果を知っていて、そのポーションが400本以上必要になると考えたら、怖くなるよね。
「フレム」
「てりゅ?」
シファルさんが防御用の魔石を1つ手に取ると、フレムを見る。
「この防御用の魔石だけど、前回と少し違うけど、防御力は同じなのか?」
フレムは、シファルさんの問いに体を左右に揺らす。
「違うのか?」
「てっりゅりゅ~」
前回とは違うんだ。
私は、手に持っている魔石を見る。
「魔法陣の攻撃は、今まで通り防いでくれるとうれしいんだけど」
「てっりゅりゅ~」
シファルさんに向かって胸を張って答えるフレム。
かなり自信があるみたいだ。
「魔法陣に対する防御力は同じ。でも前回とは違う……他の攻撃も防げたりするのか?」
「てっりゅりゅ~」
シファルさんの問いに、先ほどより少し小さな声でフレムが返事をする。
「魔法以外の攻撃は物理的な攻撃になるけど……物理的な攻撃も防いでくれるのか?」
「……てりゅりゅ~」
フレムはなぜか、少し自信なさげに鳴く。
その様子を見たシファルさんが、ポンとフレムの頭を撫でた。
「物理的な攻撃も防げるなんてすごいな。ありがとう」
フレムを見て、私は首を傾げる。
どうしてフレムは、少し困った表情をしているんだろう。
「どれくらいの威力の攻撃を防ぐのか、わかるか?」
「……」
シファルさんの問いにフレムは無言になる。
ソルも少し困った表情をしているので、物理的な攻撃をどれくらい防ぐのかは知らない事がわかった。
だからフレムは、自信なさげだったのか。
「すごいですね」
ドールさんが、魔石を見て呟く。
「そうね。魔法陣の攻撃を防ぐだけでもすごいのに、他の攻撃も防げるなんて、すごいわ」
「てりゅ~」
ランカさんの呟きに、フレムは力なく鳴く。
その様子を見たランカさんは、フレムを抱き上げるとギュッと抱きしめた。
「物理的な攻撃をどれくらい防げるのか、あとで私達が確かめるわね。でも、少しでも防いでくれるなら助かるのよ」
ランカさんの言葉に、シファルさん達が頷く。
「気を付けていても、不意打ちを食らう事がある。その威力を少しでも弱めてくれたら、生き残れる確率が上がるからな」
ヌーガさんはそう言うと、ランカさんに抱きしめられているフレムの頭を撫でた。