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1152話 スライムが集まる理由?

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1152話 スライムが集まる理由?

―フォロンダ公爵の護衛 スイナス視点―

様々な研究について記した書類の山から、1つ1つの内容を簡単に確かめ、箱に詰めていく。

「ホース―? こんな名前の魔物はいないが……」

書類に書かれていた魔物の名前に首を傾げながら中身を確認する。

「今はいない魔物みたいだな。大型みたいだから、大型の魔物の箱に入れたらいいか」

魔物の大きさごとに箱を分けている為、今手にした書類を、大型の魔物の書類が集められている箱に入れる。

「大型の魔物の箱がもう少しでいっぱいだな。書類を全て整理したら、研究の内容を詳しく調べたいんだけど……いつになるのか予想出来ないよな」

部屋の中を見渡す。

最初の頃の、足の踏み場もない状態に比べると、かなり改善されている。

それでも、書類の山はまだたくさん残っている。

「よしっ、次だ。これも大型の魔物についての研究書類か」

大型の魔物について研究した書類が多いのは、それだけ危険な存在だからだろうな。

手に持っていた書類を箱に詰めると、箱がいっぱいになったので蓋をする。

箱を積んだ後でも中身がわかるように、正面と側面に、詰めた書類の内容を簡潔に書く。

「『大型魔物についての研究書類』と書いて、えっと重要度は……この箱にはそれほど気になる内容はなかったな。『低』と書いておけばいいか」

箱を持って、棚に向かう。

棚には、書類がいっぱいに詰まった箱がずらりと並んでいるが、まだ少し隙間がある。

その隙間に、持っていた箱を置く。

「箱を置く棚にそろそろ空きがなくなってきたな。次にここへ来た時に、新しい棚を作ろうかな」

元の場所に戻り、書類の山から書類を手に取る。

内容を確かめ、箱に入れる。

ふと時間が気になり時計を見る。

「休み時間が終わりそうだな。今日はこの辺りで終わるか」

書類の山が崩れないように重りを置こうとすると、一番上の書類に書かれている言葉が気になった。

「『スライムを魔物に分類していいのだろうか』って、これは研究というより、著者の感想じゃないか?」

書類を手にすると、内容を確認する。

「『スライムは魔物とは違う生態なのに、魔物に分類されている。これは正しいのだろうか』って、少し気になるな」

書類を手にすると、部屋に持ち込んだ椅子に座る。

「著者は……名前が書かれていないな」

時間を気にしながら、書類の内容を読んでいく。

「『魔物は子供を産む事で種を存続させるが、スライムは自然の中から生まれる。これは実際に自然の中から生まれるところを見たので間違いない。またスライムが子供を産んだという情報はない。この点から、魔物とスライムは別の存在だと考えられないだろうか? そしてスライムの持つ魔力は、魔物の持つ魔力とは少し異なる』」

スライムの魔力?

「『スライムが持つ魔力は、自然の中に流れている魔力にとても似ているのだ』」

魔力も気になるが、この著者は、魔力の違いをどうやって調べたんだ?

「『オカンジ村の隣にある小さなウガイ村』。ウガイ村? 聞いた事がない村だから、きっと消えた村だな。『オカンジ村からウガイ村までの森が燃えた時の事だ。なぜか多くのスライムの目撃情報が集まったので、俺はオカンジ村に駆けつけた。でもオカンジ村に着いた時には、オカンジ村周辺のスライムは討伐された後だった。ウガイ村は、小さな村で予算がなかった為、スライムを討伐出来ず、そのまま放置された。俺はウガイ村周辺の森へ行き、スライムが増えた原因を調査した。確かに数が多かったが、スライム達が何をしているのかまでは調べられなかった。でも1年後、2つの村には大きな違いが出た。オカンジ村周辺の森は、草木がなかなか育たなかった。それなのに、ウガイ村周辺の森は、木々の成長が早かったのだ』」

偶然ではないのか?

「『また、同じような事がハタル村とハタカ村で起こった。ハタル村はスライムを討伐し、ハタカ村はスライムを放置した。1年後、ハタル村周辺の森はハタカ村周辺の森とは全く違った。草木が生い茂った森と、なかなか草木が育たない森。この結果から、森が燃えた場合は、スライムを見かけても討伐しないほうが、木々の成長速度が速いと考えられる。この事を知り合いに伝え、広めてもらおうと思う』」

そう言えば今は、森が燃えたあとは、魔物がいたとしても討伐などはせずに見守るのが当たり前になっているな。

もしかしてこの著者の考えが広がったんだろうか?

「『俺は4つの村で、魔物の変化やスライムの目撃数などの情報を集めながら、見守り続けた。その結果、育った森にも違いがあった。スライムを放置した森では、果樹など多種多様な木々が育った。スライムを討伐した村では、果樹が実る木は少なく、育った木の種類も少なかった。そしてなぜか魔物まで集まっていた。ただ魔物については5年間の目撃数から導き出した答えなので、偶然、魔物の活動拠点の変化や住処を変える時期だった可能性もある』か」

スライムが森に影響を及ぼしていると考えていいのか?

でも検証数は4ヶ所だけだからな。

偶然、4つの村ではこの結果になったと言えなくもない……か?

「検証数が少なかったから、この書類はこの部屋に来たんだろうな」

「あっ、まだ続きがある。『燃えた森で目撃されたスライムの種類。白色系のスライム』。んっ? 白色系のスライムなんていたのか? あとは『緑系のスライムが多かった。ただし地面に文字や絵が描かれていた場所には、どのスライムも近付かなかった。あの文字というか絵は、いったい何なんだろう?』」

この文字や絵は、魔法陣の一部だろうな。

そして、スライム達は避けていたという事か。

コンコンコン

「スイナス。休憩が終わるぞ」

部屋の扉を叩く音がしたあと、同僚のガンチャの声が聞こえた。

「悪い。すぐに行く」

ガンチャは、フォロンダ公爵の護衛として新しく雇った元上位冒険者だ。

もともと、フォロンダ公爵の為にいろいろと裏の仕事をしていたそうだ。

「気になる研究でもあったのか?」

書類を片付けていると、ガンチャが傍に来た。

「あぁ、スライムについての研究書類だ」

「ふ~ん」

ガンチャが俺の傍にあった書類をペラペラとめくる。

「この書類はフォロンダ公爵に持って行ったほうがいいんじゃないか?」

「えっ?」

ガンチャの言葉に、俺は首を傾げる。

「重要な内容でもないと思うけど……」

いや、少し重要かな?

「いやいや。この書類の内容は、スライム達のお陰で、木々の成長速度が上がったって事だろう?」

「まぁ、そうだな」

文献としては、検証数が少なく、信頼するのは難しいが。

「つまり、スライム達が集まるのには、何か理由がある。もしくは、役目があるからだと言える」

「そういう見方も出来るのか……」

ガンチャの言葉に俺は神妙な表情で頷く。

「捨てられた大地周辺に集まっているスライム達にも、理由があるんじゃないか? もしくは役目か」

スライムが集まる理由か。

捨てられた大地周辺でのスライムの目撃情報は日に日に増えている。

もし何かをする為に集まっているのだとしたら、それはきっと捨てられた大地の事だろう。

「そうだな。この書類は、フォロンダ公爵に持って行ったほうがよさそうだ」

どんな役目があって集まっているのかわからないが、確か黒のスライムが多いと聞いた。

黒のスライムは、魔法陣関係か。

俺はガンチャから書類を受け取ると、部屋を出て鍵を閉めた。