1161話 厄介な存在
1161話 厄介な存在
「リュウが、穴の中にいた木の魔物を探していたと思う根拠はなんなんだ?」
お父さんの問いに、シファルさんは肩を竦める。
「前に見つかったマジックアイテムはリュウが破壊したと記録に残っているそうだ」
シファルさんの説明に、皆が驚いた表情をする。
「前に見つかったマジックアイテムは、近付くだけで凶暴化するか無気力になるかのどちらかだった為、対応が出来ず被害はどんどん増えていった。当時は原因がわからなかったから、王都全体が恐怖に陥っていたらしい。そんな状態が数週間続き、王都を捨てようかという話がされ始めた時、リュウが捨てられた大地から飛んできて森の一部を攻撃。その直後から、凶暴化する事も無気力になる事もなかったので、リュウが攻撃した物を捜索した。そして見つかったのが、ヒビの入った黒い石のように見えるマジックアイテムだったんだ。マジックアイテムを回収し、詳しく調べようとしたが、爆発したので仕組みは不明。そしてその爆発で2人の調査員が死んでいる。この情報は、リュウの事を記録している物に掲載されているのをギルマスが確認している。そして今回、問題のマジックアイテムが発見された事で、リュウが捨てられた大地から飛んできたのは、そのマジックアイテムを破壊する為ではないかと言われ始めたんだ」
「そういう事ね。でも、今回のマジックアイテムは、近付いても凶暴化もせず、無気力にもならなかったわよね。ちょっと食事の量が減ったけど」
そう言えば、昔のマジックアイテムとはかなり影響力が違うな。
戦時中の物だったから、影響力が弱くなったのかな?
「マジックアイテムが爆発したせいで調べられなかったけど、俺達の報告からもわかるように、以前の物と比べると威力が弱い。考えられる理由は、経年劣化していてマジックアイテムが正常に動かなかった。他には、木の魔物がマジックアイテムを壊した。あとは、あのマジックアイテムがもともと壊れていた、とかか?」
シファルさんの話に、ランカさんが溜め息を吐く。
「マジックアイテムを詳しく調べられなかった事が悔やまれるわね」
「そうだな」
お父さんはランカさんの言葉に頷くと、シファルさんを見た。
「問題のマジックアイテムだけど、まだ、何処かにありそうなのか?」
「捨てられた大地から来た木の魔物が持っていた事から、捨てられた大地にはあると思ったほうがいいだろうな」
やっぱりあれが木の魔物を狂わせる原因なのかな?
「戦時中に作られた魔法陣もマジックアイテムも、本当に厄介よね」
ランカさんが嫌そうに言うと、シファルさんが頷く。
「魔法陣は無理だが、今のマジックアイテムはボタンがあって止める事が出来る。でも戦時中の、特に敵を倒す為に作られたマジックアイテムは一度動き始めると止まらないからな。おそらく今回見つかったマジックアイテムも破壊以外に止める方法はないだろう」
シファルさんの説明に、ラットルアさんが首を傾げる。
「破壊が出来るならするが、俺達でも出来そうなのか? リュウが攻撃してもヒビが入った程度だったんだろう」
リュウが攻撃してもヒビしか入らなかったマジックアイテムを、私が壊せるかな?
「そう言えば、このマジックアイテムの強度が書類には書かれていなかったな」
「そうね。普通は調べたら書くわよね」
シファルさんの言葉に、ランカさんが書類を確認して頷く。
「マジックアイテムについて、わかった事は書いてあるだろうから、強度については調べられなかったからじゃないか?」
お父さんの指摘に、シファルさんが頷く。
「そうかもしれないな。そもそも、リュウが攻撃してヒビが入っただけだろう。俺達は別の方法で壊すしかないが……」
シファルさんの指摘に、皆、考え込む。
「止める事も破壊する事も難しいマジックアイテムか。マジックアイテムから魔力を奪えれば、完全に止める事が出来るだろうけど、そんな方法は見つかっていないからな」
お父さんの呟きに、ランカさんが溜め息を吐く。
「捨てられた大地にある、問題のマジックアイテムが、経年劣化して全て壊れていてくれないかしら」
ランカさんの言葉に、皆が頷く。
「戦時中のマジックアイテムで問題になるのは、黒いマジックアイテムだけじゃないぞ」
不意に聞こえたジナルさんの声に、食堂の出入り口を見る。
「ジナル、久しぶりだな」
お父さんがジナルさんに向かって片手を上げる。
「あぁ、久しぶり。ところで、ゴミを詰め込んだマジックバッグを部屋に置いてきたんだけど、あのポーションと魔石の数はなんなんだ?」
あぁ、ソラ達のご飯を持ってきてくれたのか。
「あれは、ソラ達の日々の成果だ。そして、捨てられた大地へ行く為の準備だな」
ゴミを置いてある部屋に、新しい棚が設置された。
そこには、日々ポーションと魔石を詰め込んだカゴが追加されている。
「準備……あんなに必要になるってソラ達は考えているのか……」
ジナルさんはそう言うと、少し疲れた表情をした。
「ゴミを持ってきただけなのか?」
シファルさんの問いに、ジナルさんが首を横に振る。
「違う。黒いマジックアイテムの事を知ったんだろう?」
さっき話していたマジックアイテムの事だね。
「あぁ」
お父さんが頷くと、シファルさんが瓶をテーブルに置いた。
その瓶には、ヌーガさんが持っていた黒の石とよく似た黒い石が入っていた。
「これってまさか?」
ランカさんが驚いた表情でジナルさんを見る。
「あぁ、問題のマジックアイテムだ。ただしこれは、壊れているので動かないけどな」
ジナルさんの説明に、皆がホッとした表情をした。
「壊れていても、ある程度の事は調べられたんじゃないの?」
ランカさんの問いに、ジナルさんは首を横に振る。
「この中に、魔力を凝縮して閉じ込める物が使用されている事だけはわかった。ただし、描かれていた魔法陣については、全て消えてしまっていたから、それ以上の事はわからなかった」
「そう。魔法陣が消えた原因もわからなかったの?」
残念そうなランカさんに、ジナルさんは頷く。
「あぁ、そういう仕組みになっていたのか。時間が経ったせいで消えたのか不明だ。そうだ。木の魔物から採取した物を調べてわかったんだけど、あの木の魔物は自ら体を腐らせた可能性があるらしい」
「「「「「えっ」」」」」
ジナルさんの言葉に、皆が驚いた声を上げる。
「どういう事? 木の魔物がどうして?」
ランカさんが困惑した表情でジナルさんを見る。
「木の魔物が自ら体を腐らせるのは、暴走を止める為だと、ある研究者は記録を残している。そして体の一部が腐った木の魔物は確実に死ぬらしい」
つまり自ら死ぬ事で暴走を止めたって事?
「あの木の魔物は、黒のマジックアイテムの影響で暴走しないように死んだって事? また、人の作った物が木の魔物を苦しめたのね」
ランカさんはそう言うと、悲しそうな表情を浮かべた。
「このマジックアイテムは、捨てられた大地におそらく大量にある」
「大量ってどれくらいだ?」
シファルさんがジナルさんを見る。
ジナルさんは、シファルさんの問いに首を横に振った。
「捨てられた大地の森にばらまかれている為、数はわからない。その多くは時間が経っているので壊れているが、中には壊れずに残っているマジックアイテムもある事が確認されている。。そして、少し前に魔法陣が発動したせいで、周辺にあるマジックアイテムが動き始めた。その1つが、木の魔物から見つかったあのマジックアイテムだと思う」
ジナルさんの説明に、皆の表情が険しくなる。
「動き出したマジックアイテムはどれくらいあるんだ?」
お父さんの問いに、ジナルさんが肩を竦める。
「動き出したマジックアイテムのせいで、魔物は暴走しているし、中には死なない魔物までいる。そのせいで、まったく調査は進んでいないよ。最近は、捨てられた大地から溢れて来る魔物の対処で手一杯だしな」
捨てられた大地は、私が想像している以上に最悪な状態かもしれない。
木の魔物を狂わせる原因もいっぱいあるなら、全て見つけられるかな?
「2週間後、フォロンダ公爵が上位冒険者を招集する予定だ。そこで捨てられた大地へ行く者達を集めるだろう。ランカ達もドルイド達も行くつもりならしっかり準備しておいたほうがいい」
もしかして、ジナルさんはこれを言いに来たのかな?
「そろそろ招集が掛かるとは思ったけど2週間後か……」
お父さんの呟きに、皆が頷いた。