1166話 ソラとフレムの模様
1166話 ソラとフレムの模様
「ぷぷ~」
師匠さんの言葉にどう返事をしようか考えていると、ソラの少し怒った鳴き声が聞こえた。
「てりゅ~」
続いてフレムの怒った鳴き声も聞こえ、私はソラとフレムを探した。
「ソラ? フレム?」
「ぷぷ~」
「てりゅ~」
「うわっ」
再び聞こえた2匹の怒った鳴き声と師匠さんの焦った声がしたほうへ視線を向けると、なぜか師匠さんの頭の上にソラがいて、フレムが足元にいた。
「びっくりした。というか、もしかして俺は2匹に攻撃をされたのか?」
師匠さんの呟きに、私は首を傾げる。
「余計な事を言うから、ソラとフレムが怒ったんですよ」
お父さんの指摘に、師匠さんがなんとも言えない表情をする。
「だが、その覚悟は必要だろう」
「ぷっぷ~」
師匠さんの言葉が気に入らなかったのか、ソラが師匠さんの頭の上で跳びはねる。
「てっりゅ~」
フレムは師匠さんから少し離れてから、師匠さんの顔めがけて跳びはねた。
「えっ!」
私は驚きのあまり、フレムの行動をただ見つめた。
「うわっ。だから……いや、俺が悪いのか……」
顔面を攻撃された師匠さんは、少し諦めた様子で呟いた。
もしかして、さっきもフレムは師匠さんの顔を攻撃したんだろうか?
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
師匠さんの言葉に賛同するように鳴く3匹に、マルアルさんとタンバスさんが苦笑する。
「ごめんな。モンズはアイビーの事が心配なんだよ。だからちょっときつい言い方をしただけなんだ」
マルアルさんがソラ達に声を掛けると、ソラ達はなぜか彼に向かって胸を張る。
「ん~、もしかしてソラ達がいるから大丈夫って事かな?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
マルアルさんが少し考えて言うと、ソラ達はうれしそうに鳴いた。
その反応に、マルアルさんが楽しげに笑った。
「ソラ、あり……あれ? ソラの体に模様があるんだけど……。あっ! フレムにもある。どういう事?」
私の視線の先にいるソラとフレムの体には、それぞれ今までなかった模様が浮かび上がっていた。
「この模様、ソルの模様とよく似ているね」
ソラとフレムの模様をよく見ると、ソルの模様ととても似ていた。
私の呟きに、お父さんがソラ達に近付く。
「本当だ。ソラとフレムの体に模様が浮かび上がっている。ソラは濃い青色で、フレムは濃い赤色の模様か。体の色と濃さが違うだけだから、ちょっと見えにくいけど、ソルの模様と似ているな」
お父さんの呟きに、シファルさんが師匠さんの頭の上からソラを下ろす。
そしてジッとソラの体を観察すると、首を傾げた。
「どうして模様が浮かび上がったんだ? アイビー、理由はわかるか?」
シファルさんの問いに、私は首を横に振る。
「いいえ」
「ソルの模様は最初から?」
シファルさんの問いに、私は少し考え込む。
「ソルの模様は……あっ、最初はなかったんだけど、確か……不当な捨て場のゴミの魔力で凶暴化した魔物の魔力を食べた後から、模様が浮かび上がったんだと思う。今の色になったのは、もう少し後だけど」
「魔物の魔力を食べて……。もしかして、ポーションや剣をたくさん食べたから、模様が浮かび上がったのか?」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
シファルさんの言葉に返事をするソラとフレム。
「正解みたいだな。で、これは進化なのか?」
シファルさんが、ソラとフレムを見る。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「スライムは進化する魔物なのか……」
ソラとフレムのうれしそうな返事に、タンバスさんが小さな声で呟く。
「もしかして、たくさん食べていたのは進化する為だったりして」
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
ランカさんの呟きに、ソラとフレムはうれしそうに鳴く。
「まさか、本当に進化する為だったなんて……」
ランカさんは思わず言ってしまったようで、自分が言い当てた事に驚いた表情をした。
「あっ、模様が消えた……」
ソラとフレムの体に浮かび上がっていた模様が、目の前でスーッと消えると、皆が驚いた表情を浮かべた。
「そう言えば、ソルも普段は模様が見えなかったな」
お父さんがソルを見て言うと、皆が頷いた。
「あれ? なんの話をしていたんだっけ?」
ラットルアさんの言葉に、皆が顔を見合わせる。
「生き延びる為の話だったよね」
私の言葉に、皆が私に視線を向ける。
「師匠さん。私は、怪我人を見捨てる事が出来そうにありません。見捨てる覚悟もありません」
やっぱり、どう考えても私には無理だと思う。
それにソラ達が、師匠さんの言葉に怒ってくれた。
だから、私はソラ達を信じる。
ソラ達がいれば、きっと怪我人を見捨てる事なく生き延びられると。
「そうか」
師匠さんは小さくそう言うと、私に視線を向けた。
「悪いな……いつからだろうな。自分が傷つかないように逃げ道を作るようになったのは」
師匠さんの言葉に、タンバスさんが頷く。
「俺達、情けないな。助けたくても助けられなかった事で自分が傷つくなら、最初から諦めてしまえばいい。そんな考えが当たり前になっているんだから」
タンバスさんの呟きに、師匠さんが苦笑する。
「自分を守る為に必要な事だったのだろうな」
師匠さんはタンバスさんと目が合うと、肩を竦めた。
「そろそろ行かないと、あいつら怒るぞ」
マルアルさんが師匠さん達に声を掛けると、2人はなぜか嫌そうな表情をした。
「怒らせると面倒くさい事になる。行こうか」
師匠さんはそう言うと、私とお父さんに視線を向けた。
「準備もあるから次に会うのは、捨てられた大地の前だろう。しっかり準備をしておけよ。無駄かもしれないと思った物でも、気になる物は持って行け。それが役に立ったりするから」
「わかりました」
「気になる物……はい。わかりました」
お父さんと私の返事に師匠さんは満足そうに笑うと、私に向かって手を振って出て行った。
3人を見送ると、お父さんが少し考え込む。
「お父さん、どうしたの?」
「いや、岩に残されていた言葉が気になってな」
お父さんの言葉に、私は首を傾げる。
「ねぇ、食堂で話をしない? ずっと玄関にいるつもり?」
ランカさんの注意に、いまだに玄関にいた事に気付く。
「そうだな。ゆっくりお茶でも飲んで、今の話を考えようか」
シファルさんはそう言うと、食堂へ向かう。
お父さんと私も、シファルさんの後に続いて食堂へ向かう。
「ぷっぷぷ~」
「てっりゅりゅ~」
「ぺふっ」
私の後に続く3匹に視線を向ける。
「あれ? シエルはどうしたの?」
いつもソラ達と一緒にいるシエルがいない事に首を傾げると、ソラ達は立ち止まり、庭のほうを見る。
「庭にいるの?」
「ぷっぷぷ~」
私は食堂へ行く前に庭へ出て、シエルを探す。
「あそこだ。何をしているんだ?」
お父さんが指したほうを見ると、シエルは庭で一番大きな木の傍にいた。
「何かいるのかな?」
シエルは座った状態で下を向き、前脚が動いていた。
「ん~、ここからでは見えないから近付いてみようか」
お父さんの提案に頷くと、私はシエルの傍へ行く。
「シエル、何をしているの?」
シエルの傍に来ると、動いている前脚に視線を向ける。
「石?」
シエルはなぜか、前脚で直径3㎝程の石を転がしていた。
初めて見る姿に私はお父さんを見る。
「何をしているかわかる?」
私の問いに、お父さんが首を横に振る。
「いや、本にも載っていないからわからない。えっ」
シエルの様子を見ていたお父さんが驚いた声を上げるので、私は慌ててシエルを見る。
「あっ、石じゃなくて空の魔石だったんだ。……んっ?」
シエルが前脚で転がしていた石が、緑色の魔石に変わっている事に気付き、私は呟く。
そして首を傾げる。
「にゃうん」
シエルは、緑色になった魔石をジッと見て不服そうに鳴くと、私とお父さんを見た。
「にゃうん」
もう一度不服そうに鳴くと、魔石を前脚で勢いよく転がした。
庭の隅に転がっていく魔石を見つめる。
「お父さん」
「なんだ」
「アダンダラって空の魔石に魔力を籠められるの?」
「そうみたいだな。初めて知ったけど」
お父さんに視線を向けると、お父さんはなんとも言えない表情でシエルを見ていた。
「最弱テイマー」を読んでいただきありがとうございます。
1165話は更新日を勘違いしてアップしてしまいました。
申し訳ありませんでした。
ほのぼのる500