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1167話 子供達の為に残されたもの

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

1167話 子供達の為に残されたもの

「シエル」

私の呼び掛けに、シエルが私に視線を向ける。

「にゃうん?」

「シエルは、空になった魔石に魔力を籠められたんだね」

「にゃうん」

私の問いにシエルは鳴き、フレムを見た。

「もしかしてフレムに教えてもらったの?」

「にゃうん」

シエルの返事に、私がフレムに視線を向けると、なぜかフレムだけでなくソラとソルも胸を張っている。

「えっ、ソラは無理だし、ソルは魔石を作れるけど、魔力は籠められないよね?」

私の言葉に、少し不服そうな表情を見せるソラとソル。

いや、そんな顔をされても出来ないよね?

「いいなぁ」

シファルさんの小さな呟きに視線を向けると、彼はジッとフレムを見ていた。

「シファルさん?」

「俺もフレムの言葉がわかったら、シエルのように魔石に魔力を籠められるようになるかもしれないのに……」

悔しそうに呟くシファルさんに、私は苦笑する。

「シエル、あの魔石を貰ってもいいか?」

「にゃうん?」

シファルさんの問いに、シエルが首を傾げる。

「シエルが魔力を籠めた魔石が記念に欲しいんだけど、駄目かな?」

シファルさんが言い換えてシエルに伝えると、シエルは少し考え込む。

そしてシファルさんを見て頷いた。

「ありがとう」

シファルさんのお礼に、シエルはチラッと魔石を見て溜め息を吐いた。

「シエルは、魔石の出来に納得していないみたいだな」

「にゃうん」

お父さんが小さな声で呟くと、シエルが不貞腐れたように鳴く。

その様子にシファルさんは微笑むと、シエルが転がした魔石を拾った。

「レベルは……濁りからすると5くらいかな。なかなかの出来だと思うけど」

「にゃっ」

シファルさんの評価に、シエルから小さな鳴き声が聞こえた。

「レベル5の魔石でもすごいと思うけど、シエルは不満なんだね」

「にゃうん」

私がシエルの頭をそっと撫でると、シエルは喉を鳴らしながら私の手に鼻をこすりつけた。

「そろそろ食堂へ行こうか。ランカが、俺達が来ないから困っているかもしれない」

シファルさんの言葉に、私は笑って頷く。

「うん。シエルも行こう」

「にゃうん」

食堂へ行くと、ランカさんの「遅い」という声が出迎えた。

「悪い。途中でシエルのところに寄っていたから」

シファルさんの説明に、ランカさんがシエルに視線を向ける。

「何かあったのか?」

ヌーガさんが不思議そうな表情でシファルさんを見る。

「いいや。ただ、シエルが空の魔石に魔力を籠めていただけだよ」

「そうか……んっ? 魔力を籠める? シエルが?」

シファルさんの説明に、ヌーガさんは頷きかけたが、途中で首を傾げた。

「くっ、くく。あぁ」

ヌーガさんの反応に、シファルさんが笑いながら頷く。

「シファル、それは本当なの?」

ランカさんがシファルさんに聞くと、彼は頷くと、手に持っていた魔石をランカさんに見せた。

「す、すごい。えっ、それが、シエルが魔力を籠めた魔石なの? どうしてシファルが持っているのよ!」

「シエルに貰ったんだよ」

シファルさんの返事に、ランカさんが悔しそうな表情をする。

「一緒に庭へ行けば良かったわ」

「にゃうん?」

シエルは、ランカさんの言葉に首を傾げる。

「私もシエルが魔力を籠めた魔石が欲しいわ。シエル、次に魔石に魔力を籠めたら、私に頂戴」

シエルは、ランカさんをジッと見つめると頷いた。

「にゃうん」

「ありがとう」

ランカさんはシエルにお礼を言うと、シファルさんが持っていた魔石を借りて、見つめ始めた。

そんなランカさんを見ていると、目の前に温かいお茶が置かれた。

「お父さん、ありがとう。そうだ。『岩に残されていた言葉が気になる』と言っていたけど、師匠さんが話していた事が気になったの?」

目の前に座ったお父さんに聞くと、彼は首を横に振った。

「いや、師匠の言っていた事が気になったわけではなくて、俺も何処かの洞窟で、岩に刻まれた言葉を見たと思うんだよ。ただ、何処だったのか、いつだったのか思い出せなくて……」

お父さん自身が、岩に刻まれた歌や物語を見たって事?

でも、思い出せないって事は、かなり昔なのかな?

「洞窟の中で見たのなら、仕事中に見たんじゃない?」

ランカさんの言葉に、お父さんは真剣な表情で考え込む。

「仕事中……洞窟……。あぁそうだ! 思い出した! 逃げ込んだ洞窟の中で見つけたんだ」

お父さんの言葉に、私はお父さんを見る。

「裏の仕事で、森の中にある貴族の隠れ家にもぐりこんだんだけど、バレて逃げている時だ。隠れ家を見つけるのにも時間が掛かったせいで2日は寝ていなくて、しかも見つかった時に、何かの薬を投げつけられたんだよ。そのせいで意識が飛びそうな状態で逃げたから、途中で自分が何処にいるのかもわからなかったんだった」

それってかなり危険な状態だったのでは?

「良く逃げ切れたわね」

ランカさんが感心した様子で呟くと、シファルさん達も頷いている。

「掴んだ情報を、なんとしても持ち帰りたかったんだ」

「そう。それで、逃げている最中に洞窟を見つけたってわけね」

「あぁ、ふらふらの状態で洞窟を見つけて、少し休憩するつもりだったと思う。でも、意識を失っていたみたいで気付いたら数時間経っていたんだ。起きて洞窟を出ようとすると、森のほうで人の気配がしたから洞窟の奥へ入るしかなかった。それなりに大きな洞窟だったから別の出入り口があると思ったしな。そうだ、あの洞窟、奥へ進むと人の手が加えられた跡を見つけたんだ。その跡を辿って奥へ進んで……それで歌と絵を見つけたんだった。歌は師匠が話していた物と似ていたな。重要な歌だと考えてもいなかったから、師匠の話を聞くまですっかり忘れていたよ」

師匠さんの話を聞いて、昔の事を思い出したって事か。

「お父さん、どんな歌だったの?」

「内容は『黒の旅人が来たぞ。逃げろ~、逃げろ~。白の旅人が来たぞ。隠れろ~、隠れろ~。黒い花を見つけたら、川へドボン。地下へ続く道を見つけたら、すぐに……』。この先は崩れていて読めなかった」

「ドルイドが見つけた歌は、『地下へ続く道を見つけたら』だったのね」

ランカさんの言葉に、お父さんが頷く。

「あぁ、ちょっと自信はないが、俺の中ではそう記憶している」

「ドルイド、絵はどうだ? 覚えているか?」

シファルさんの問いに、お父さんが考え込む。

「絵は……何かの上で沢山の人が倒れていた絵だったと思う。上のほうは岩肌が剥がれ落ちている部分もあって、よく見えなかったけど、何かが描かれていたと思う」

沢山の人が倒れていた絵か。

……何か起こったあとの絵なのかな?

「人が倒れていて、その上に何かあるかもしれないんだな」

シファルさんの呟きに、お父さんが頷く。

「人の手が加わっていたという事は、逃げてきた人達がそこで生活をしていたのかもしれないな。そして歌や絵は子供達に、危険な事を伝える為に使われた」

シファルさんの言葉に、私は首を傾げる。

子供達に危険を伝える?

「その可能性があるだろうな。味方か敵なのかはわからないが、兵から逃げてきた者達が洞窟で隠れて生活をしていた。そして、子供達に、兵や地下にある何かの危険を教える為に壁に書き残した」

お父さんの説明に、私は頷く。

だから洞窟の奥に、歌や物語、そして絵が残っているのか。

師匠さんの話では、あちこちの洞窟に残っているみたいだったから、それだけの人達が隠れ住んでいたって事だよね。

「変な世界だよね」

「アイビー?」

私の呟きに、ラットルアさんが視線を向ける。

「マジックアイテムを作りだせるほど技術力があるのに、歌や物語からは恐怖しか感じない。敵からも味方からも逃げないといけないなんて、悲しいし、おかしいよね」

どんなにすごいマジックアイテムを作り出せたとしても、それで幸せになれるとは限らないんだね。