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727話 村のテイマーとスライム達

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

727話 村のテイマーとスライム達

「隠れた方が良いのかな?」

気配から、捨て場に来ている人数は2人。

特に気配を隠している様子は無いので、冒険者や自警団員とは違うみたい。

「いや、隠れる必要は無いだろう」

「そう?」

「あぁ。ソラ達をバッグから出す前だしな」

肩から下げたバッグを見る。

捨て場に着いてから、ソラ達を出す予定だったんだよね。

まさか、捨て場はこんな感じだとは思わなかったから。

「とりあえず、捨て場からは出ておくか」

「うん」

お父さんと捨て場を出ると、ゴロゴロという音が聞こえた。

「おやっ? こんにちは」

しばらくすると、男性が台車を引いて現れた。

後ろには男の子もいる。

「「こんにちは」」

台車には、村から出たゴミが積まれている。

今日は、捨て場に持って来る日だったのか。

「見かけない顔だけど。旅の人達かな?」

「はい、そうです」

「そうですか。よっと」

男性の方は、見た目からだと70歳ぐらい。

男の子は、私と同じ10歳前後かな。

「じい。重い物は俺が運ぶから」

「悪いな」

男の子が、彼と変わらない大きさの家具をぐっと持ち上げて運び出す。

「すごい」

思わずつぶやくと、男の子と視線が合う。

「べつに……重くないし」

少し恥ずかしそうに言うと、捨て場に入って行った。

そして、空いている場所に置くと、周りのゴミを整理しだす。

その手つきに、それがいつもの事だと分かる。

ゴミを運ぶたびに整理しているから、この捨て場は綺麗なのか。

「ほれほれ、頑張れ~」

男性の声に視線を向けると、2匹のスライムが彼の周りで飛び跳ねていた。

「スライムだ」

男性の周りを飛び跳ねるスライムは、1匹は濁った緑色のスライム。

もう1匹は少し変わっていて、桃色と白色をぐるぐるかき混ぜたような色合いをしていた。

少し変わった色のスライムを見ていると、視線が合う。

「ほわっ」

えっ?

今、ソラ達みたいに鳴いた?

「おや? ポポは、彼女が気になるのか?」

「ほわっ。ほわっ。ほわっ」

なぜかポポと呼ばれた変わった色のスライムが勢いよくこっちに飛んでくる。

どうしたらいいのか困っていると、目の前で止まってぴょんぴょんと飛び跳ねた。

「えっと、これは……」

どうしたらいいんだろう?

お父さんも困惑している様子が分かるので、男性に視線を向ける。

「珍しいねぇ。いや、すまないね。どうやらポポは、あなたが好きみたいだ」

好き?

ポポと呼ばれるスライムを見ると、ずっとぴょんぴょん飛び跳ねている。

手を伸ばすと、勢いよく胸元に飛び込んできた。

ソラ達で慣れているので、さっと抱きしめる。

「もしかして、あなたはテイマーかい?」

えっ、バレた?

どうして?

お父さんを見ると、少し険しい目を男性に向けている事に気付く。

「いやいや、悪い。お父さんかな? そんなに警戒しないで欲しい。ただ、ポポを抱きしめた時の様子が慣れているからね」

あっ、なるほど。

「すみません。いろいろありまして」

お父さんの言葉に、男性が首を横に振る。

「いやいや、今はどの村や町もテイマーを取り合っているみたいだからね。警戒するのはわかりますよ。それより、ポポ。そこで寝ないでね」

寝る?

腕の中のポポを見ると、目を閉じている。

「ポポ。起きて、寝ちゃ駄目だって」

「ほわっ?」

不思議そうに見上げるポポが、可愛い。

「ポポ。お仕事、お願いね。頑張ってくれたら、いっぱい遊ぼうね」

「ほわっ!」

腕の中から勢いよく飛び出すポポ。

男性をチラッと見ると、そのままゴミに向かった。

ふふっ、男性と遊ぶのがそんなに楽しみなのか。

可愛い。

「スライムといい関係を築いているんですね」

お父さんの言葉に、男性が笑う。

「特別な事などしていませんよ。ただ、家族として大切にしているだけです。娘さんは、いや、訊かない方が良いのかな?」

男性が私を見て、お父さんを見る。

「娘もテイマーとして、うまく関係を築けていますよ」

「そうですか。だからポポが、あなたを好きになったんですね」

男性の嬉しそうな視線が私を見る。

それにちょっとだけ恥ずかしい気持ちになる。

「じい。あとは奥だ」

男の子が、台車を引こうとしているので首を傾げる。

台車の上には、まだゴミが載っている。

「あぁ、ごめんねぇ。話し込んじゃったよ。ポポ、ミミ。奥に行ってくるね」

「ほわっ」

「……」

ポポとミミと呼ばれたスライムは、男性の声に視線を向ける。

男性が手を振ると、それぞれまたゴミを食べ始めた。

「では、失礼しますね」

男性が台車の後ろを押すと、ゆっくりと台車が動き出す。

男の子と男性は、捨て場から森の奥へ行くみたい。

台車の上を見ると、マジックアイテムや剣が載っている。

「ゴミが少ないと思ったら、ここには大きなマジックアイテムや冒険者の装備などが無いんだ」

えっ?

お父さんの言葉に、捨て場を見回す。

本当だ。

小型のマジックアイテムはあるけど、大きなマジックアイテムが1つも無い。

冒険者の、楯も剣も槍もだ。

「他にも捨て場があるという事?」

「そうみたいだな。行ってみよう」

「うん」

ソルの食べるマジックアイテムが、ここの捨て場だけでは足りなくなるだろうし。

ソラの食べる剣が、そもそもここには無い。

他にも捨て場があるなら、確かめておかないと。

「あの人達の後を付いて行って大丈夫かな? 怪しまれない?」

「奥にある捨て場も整理されていたら、男性に少し訊きたい事があるんだ」

お父さんの言葉に首を傾げる。

「まぁ、とりあえず確かめに行こうか」

「うん」

男性たちが向かった方を見る。

ゆっくり進んでいたから、後ろ姿が見えるかと思ったけど、既にいない。

思ったより早く移動していたのかな?

「台車の跡を辿れるな」

お父さんが地面を指す。

そこには、車輪の跡がくっきり2本あった。

「ずっと奥に向かっているな」

台車が通った跡をたどりながら、周りを見回す。

しばらく歩くと、木の板で囲われた場所が見えた。

「あそこみたいだな」

「うん」

捨て場を木の板で囲っているのは、初めて見たな。

台車の傍に来ると、捨て場を覗き込む。

「わぁ、凄い量」

整理整頓されてはいるが、大きなマジックアイテムの量が多い。

「あれっ? こっちにも来たんですか? もしかして向こうでは捨てられない物がありましたか?」

男性が驚いた表情で、お父さんと私を見る。

男の子も驚いたのか、マジックアイテムを持ったままこちらを見ている。

「いえ、少し確認したい事がありまして」

「確認ですか? もしかして……」

男性の視線が私を見る。

なんだろう?

「ん~、え~……あのね、もしかして、もしかしてなんだけど。答えたくなかったら無視してくれていいからね」

男性の言葉に首を傾げる。

「マジックアイテムを食べられるスライムを、持っていたりしないかな? いや、横取りするとか絶対にしないから。そんな事をしても、いい結果にならないから。スライムは頑固だから、認めていない者の為には仕事をしないんだよね。だから、絶対に、取ったりしない。ただ見ての通り、マジックアイテムを食べてくれるスライムがいなくなってしまって、非常事態なんだよね」

「いなくなった?」

お父さんの言葉に、男性が悲しそうな表情をした。

「うん、テイムしていた者が亡くなってね。それでも少しの間は、この村にいてマジックアイテムを食べてくれていたんだけど、やっぱりいなくなっちゃってね」

そうだったんだ。

お父さんを見ると、お父さんも私を見ていた。

「すみませんが、お名前は?」

お父さんの急な質問に、男性は不思議そうな表情で私とお父さんを見る。

私はお父さんの意図が分かったので、ソラ達が入っているバッグにそっと手を添えた。

ソラが反応しなければ、お手伝いしよう。