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749話 不思議なパトパ

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

749話 不思議なパトパ

「パトパ」を手に入れたけど、ちょっと困った事になってしまった。

もう少し臭いが抑えられていると思っていたので、罠を作る場所について考えていなかった。

森に行く事が出来れば問題は解決出来たけど、今は自警団から制限が掛かっている。

「お父さん。場所はどうしよう?」

「そうだな。クラは、どこかいい場所を知らないか?」

お父さんの言葉にクラさんが、大通りの方を指す。

「大通りを越えた場所、広い場所ある」

「そこは誰でも使用していい場所なのかな?」

「うん。自警団の人達が、罠を作るのに使う場所」

クラさんの言葉に、お父さんが首を傾げる。

「外で罠を作っているのか?」

「うん。臭いから」

臭い?

「もしかして自警団員の作る罠にも『パトパ』が使われているのか?」

「うん」

そうなんだ。

自警団員さん達も「パトパ」を使っているんだ。

狩りでの臭いが気になったけど、大丈夫と言う事かな?

「案内を頼んでいいかな?」

「もちろん」

「ありがとう。凄く助かるよ」

お父さんの言葉に、嬉しそうに頷くクラさん。

それを見て、お父さんがクラさんの頭を撫でた。

クラさんに案内された場所は、周りには民家も店もない少し広めの広場のような場所。

出入り口から離れたところに、テーブルと椅子が置いてあった。

「なんというか、不思議な場所だな」

お父さんの言葉に頷く。

罠を作る以外に、どんな使い方をしている場所なんだろう?

自警団員が訓練するには狭い。

「誰か来るな」

お父さんの言葉に、気配を感じた方を見る。

「こんにちは、ここに用事ですか?」

白髪の年配の男性が、ゆっくりと歩いて来た。

「はい。罠を作ろうと思ってこの場所を紹介してもらいました。使っても大丈夫でしょうか?」

お父さんの言葉に、男性は嬉しそうに笑う。

「罠ですか? どんな罠を?」

なんだろう?

ちょっと前のめりで聞かれるんだけど。

「えっと、魔物を狩るための罠です」

「ほぉ。いいですね。あぁこの場所でしたね。この場所は『パトパ』を使用するために作られた場所なので、誰が使っても問題ないですよ」

「パトパ」を使うための場所?

「おや、『パトパ』を知りませんか?」

「いえ。今、購入して来てそれを使用して罠を作るつもりだったんです」

「それはいい。作る時はちょっと臭うが、罠の強度を上げるのに最適ですよ」

やっぱり強度を上げるのに、この村でも使われているんだ。

「少し質問をしてもいいですか?」

お父さんの言葉に男性が頷く。

「『パトパ』も、パトパトの実ほどではないですが臭いですよね? 臭いは消えると聞きましたが、どれくらい消えるんですか?」

「『パトパ』は完全に固まったら、臭いは全く気にならないと思いますよ」

全く?

「そうなんですか?」

「えぇ、実際に使ってみないと信じられないかもしれませんが、気にならない臭いになります」

男性の言葉に首を傾げる。

気にならない臭い?

臭いはするけど、臭くないという事かな?

でもクラさんがパトパトの説明をしてくれた時は、「完成品は少しだけくさい」と言っていたよね?

クラさんにとっては、少しだけくさかったのかな?

「ちょっと臭かった」

クラさんも不思議に思ったのか、男性に言う。

それに男性は少し考えこむ。

「ん~、もしかして完全に固まる前だったのかもしれないですね。『パトパ』は完全に固まるまでに1週間ほど掛かります。1週間という時間を掛けてゆっくり臭いが変わっていくので、途中だとまだ臭いと感じるんですよ」

完全に固まるまで1週間もかかるんだ。

今、罠を作って使用できるのは1週間後?

「変わっていく臭いは、どんな臭いなんですか?」

「そうですね。……濃い森の香りかな?」

男性の言葉に、お父さんも私も首を傾げる。

「濃い森の香り」とは、どんな香りなんだろう?

草木の香りって事?

「まぁ、これは説明が難しくて」

少し困った表情の男性に、お父さんが慌ててお礼を言う。

「いえ、色々と教えて頂きありがとうございます」

「役に立てたのなら嬉しいですよ。そうだ、罠を作るのを見てもいいですか? 昔は私も罠を作って狩りをしたもんで」

この男性も、罠を使って狩りをしたんだ。

自警団でも罠を作っていたし、マーチュ村では罠は身近な物なのかも。

「もちろんです」

広場に入って、奥にあるテーブルに向かう。

「あっ、忘れるところだった。私は、ホウセと言います。よろしくお願いしますね」

「俺は、ドルイドです。こちらは娘のアイビー。彼は、この村で色々とお世話になっている方です」

「クラです」

お父さんの紹介に、男性に向かって頭を下げる。

横を見るとクラさんも頭を下げていた。

「丁寧に、ありがとうございます。クラと言えば、宿『バーン』のバトアの、孫だったかな?」

男性の言葉にクラさんが頷く。

「おおきくなったなぁ」

知り合い?

クラさんを見ると首を横に振った。

という事は、ホウセさんが一方的に知っているのかな?

「んっ? そういえば、こうして話をするのは初めてだったかな? バトアと私は師弟関係にあったんだ。まぁ、かなり昔の事だけどね」

師弟関係?

……えっと農作業の?

「あの、どんな師弟関係なんですか?」

「あれ? 知らない? あぁ、君達は旅人だったのか」

ホウセさんが少し驚いた表情で、お父さんと私を見た。

そして、旅人だと気付くと納得したように頷いた。

「バトアに戦うすべを教え込んだんだよ。彼等の一族は、この村の最後の壁だからね」

確かに、あの体格は戦いに向いているけど、まさかこの村を守る壁だったなんて。

クラさんを見ると、彼も分かっているのか頷いている。

「クラさんも?」

「違う」

クラさんは違うんだ。

でも一族と言ったよね?

「彼は、戦いのスキルを持っていないからね。そんな子に無理やり戦わせるなんて馬鹿のする事だよ。まぁ、体格はいいから冒険者向きではあるけど、本人は確かテイマーを極めるんだったよね」

「うん」

クラさんはテイマーを極めるんだ。

そんな凄い考えを持っているなんて知らなかったな。

森へ出る許可が出たら、クラさんのテイム出来る魔物を真剣に探そう。

ソラやシエル達に、協力してもらうのもいいかもしれないな。

「さてと、何をするんですか?」

ホウセさんが楽しそうにお父さんを見る。

お父さんがマジックバッグから、罠に使う材料をテーブルに出した。

「これは、壊れたカゴがまた沢山ありますね。ん~」

不思議そうに壊れたカゴを持つホウセさん。

罠の材料をゴミの中から見つけて来るのは珍しいもんね。

「カゴを重ねて『パトパ』でくっつける予定です」

「そうですか。でも、このカゴでも大丈夫なんですか?」

半分壊れて無くなったカゴを持って、ホウセさんがお父さんを見る。

「えぇ、大丈夫です」

お父さんが比較的綺麗なカゴを持つと、壊れたカゴを重ね合わせていく。

そして、今まで通り紐で縛った。

「あれ? 紐を使うの?」

「仮止めだよ」

なるほど。

お父さんがカゴを何個も使って綺麗なカゴの形にすると、ホウセさんが感心したように頷いた。

「壊れたカゴでも、しっかりした罠が作れるものなんですね」

「ゴミの中から使えそうな物を探すのも楽しいですよ」

「ははっ、なるほど。それにしてもゴミを利用するのは驚きましたが、罠に使用するカゴは魔物が暴れるため、使えるのは2回か3回。今まで壊れたら捨てていましたが、まだまだ使えたんですね。もったいない事をしたな」

その通り。

壊れたカゴを組み合わせたら、新しいカゴを作れるからね。

しっかり作られたカゴは、一部が壊れたぐらいで捨てるのはもったいないと思う。

「それじゃ次、『パトパ』を使って引っ付けていくか」

お父さんが、購入した「パトパ」をテーブルに置く。

一緒に買った刷毛も出すと、「パトパ」の瓶の蓋を開けた。

「……やっぱり結構、臭うね」

鼻の奥にツンとする臭い。

お父さんも、眉間に皺が寄っている。

ホウセさんは、慣れているのか楽しそうに笑っている。

クラさんを見ると、ちょっと離れた場所にいた。

思ったより臭かったみたいだ。