LNCrawler

774話 雪道は!

最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。 — ncode.syosetu.com · All chapters

774話 雪道は!

お父さんとクラさん、そしてウルさんと私で森に罠を確かめに行く。

雪の降った量から、おそらく罠は雪に埋もれてしまっている。

でも、もしもという事があるから、ちょっとだけ期待してしまう。

そして今回は、確認だけでなく罠の回収も目的の1つ。

なぜなら、雪で見えなくなった罠に冒険者が足を乗せてしまう可能性があるから。

硬くしたカゴは、冒険者に大怪我を負わせる危険性がある。

怪我を防ぐためにも、罠の回収は重要だとお父さんが教えてくれた。

「よく積もっているなぁ」

3回目の滑った後に、つい言葉が漏れる。

そう、私にとっては罠より今は目の前の雪が問題。

昨日の夜は、ずっと雪が降り続けていたのだろう。

朝方には止んだけど、既にかなりの積雪となっていた。

そのせいで、私は去年と同じように雪道と格闘している。

「大丈夫?」

クラさんが、私を見て心配そうな表情をする。

隣のウルさんは、少し顔を横ずらして口を押えている。

あれは、絶対に笑っているのだと思う。

あっ、お父さんの肘がウルさんの脇腹に……痛そう。

「いてっ。ひどくないか? ドルイドだって――」

「黙ろうか」

お父さんの言葉にウルさんが、呆れた表情を見せる。

でも、大丈夫。

お父さんが笑っていたことは、ちゃんと知っているから。

というか、雪道の歩き方をお父さんと確認して、何度も頭の中で想像したのに。

想像した私は、ちゃんと雪道を歩けていたのに……現実は、全く違う。

「アイビー、体に無駄な力が入っているみたいだ。もう少し力を抜かないと」

お父さんの言葉に頷く。

何度も滑るせいで、体に無駄な力が入ってしまっている事は自分でもわかっているから。

そのせいで、余計に滑りやすくなっている事も。

だけど、分かっていはいるのに、なかなか力が抜けない。

「手を握ろうか?」

クラさんが手を差し出してくれる。

それに首を横に振る。

去年、お父さんも同じ事をしてくれたけど滑る時は滑る。

しかも、滑った時にお父さんを巻き込みそうになって怖かった。

だから、絶対に手は握れない。

「大丈夫」

私の答えに不思議そうな表情をするクラさん。

悪いなと思いながら、もう一度「大丈夫」と伝える。

もう一度、お父さんから聞いた歩き方を思い出す。

そして、雪道を歩いている自分を想像して。

よしっ、大丈夫。

あっ、さっきよりも上手に歩けていると思う。

このまま、このまま。

「門だな」

ウルさんの言葉に、ホッとする。

宿から門まで、滑った回数は4回。

前よりちょっとだけ、雪道を歩けるようになったと思う。

たぶん。

「森の方が、雪の下の道が凸凹しているから歩きやすいかもな?」

ウルさんの言葉に首を傾げる。

そうかな?

「いや、逆に雪の下に何があるか分からないから危険だ」

お父さんの言葉に頷く。

そうだよね。

罠の回収も、その危険を減らすためだし。

「行ってらっしゃい。吹雪く可能性があるので、あまり遠くまでは行かないように注意して下さい」

門番さんから注意を受けて、森へ出る。

森の景色も、一面真っ白な世界に変わっていた。

2日前までは、ところどころに土が見えていたのに、今ではどこを見ても真っ白だ。

「さて、俺はどこにあるのか知らないから、道案内を宜しくな」

ウルさんの言葉に、クラさんが森の奥を指す。

さすがに、雪で見た目が変わっても分かるんだね。

門から少し離れた場所で立ち止まり、ソラ達を出す。

ソラとフレム、シエルは勢いよくバッグから飛び出したのに、ソルはなかなか出てこない。

バッグの中を見ると、外を窺っているソルの姿がある。

別に雪が初めてでは無いのに、どうしたんだろう?

「ソル、出ないの?」

「ぺふっ」

ソルの返答に、出ないと分かる。

まぁ、こんな寒い日は出たくなくなるよね。

「お休み」

「ぺふ~」

バッグの蓋を閉めると、今度はシエルを先頭に歩き出す。

途中でシエルがアダンダラに戻ると、近くの木々に前脚を掛けて揺らしだした。

「何をしているんだ?」

「さぁ」

ウルさんの言葉に、首を横に振る。

初めての行動なので、全く分からない。

お父さんを見るが、お父さんも首を横に振っていた。

バサバサバサバサ。

木々に積った雪が一気に落ちて来る。

シエルを見ると、雪が落ちてくる前に非難していた。

さすが。

あれ?

落ちてきた雪の中に赤い物がある。

「「あっ」」

お父さんとウルさんが、その赤い物を見て驚いた声を出した。

「トートミ」

クラさんも驚いたのか、たぶん赤い物の名前を言って目を見開いている。

そんなに驚く物なのだろうか?

「まさかトートミが落ちて来るとは思わなかったよ」

ウルさんの言葉に、シエルがちょっと自慢げな表情を見せる。

それにウルさんが楽しそうに笑う。

「凄いな」

「にゃうん」

自慢気に鳴くシエルに、やっぱりウルさんは楽しそうだ。

「お父さん。トートミって何?」

初めて見るトートミにそっと近づく。

あれ?

もしかして果実かな?

甘い香りがする。

「冬に収穫できるトートミの木に生る果実だ」

あっ、やっぱり果実なんだ。

香りが凄く甘くておいしそうたもんね。

「木は見つけられるけど、果実は見つけられない事から『奇跡の果実』とも言われていて、かなり貴重な物だ」

奇跡の果実?

「触っても大丈夫?」

「あぁ、問題ない」

お父さんの言葉に頷くと、そっとトートミに手を伸ばす。

大きさは、20㎝ぐらいの丸い形。

表面は赤くて少し凸凹していた。

「凄く優しくて、甘い香りだね」

トートミを持つと、ふわりと香りに包まれる。

「皮まで甘いらしいぞ」

ウルさんが、興味津々という雰囲気で私が持つトートミを見る。

クラさんも興味があるのか、傍に来るとトートミにそっと触った。

「初めて」

クラさんの言葉に、トートミが落ちてきた木を見上げる。

他にもトートミがあるかもしれないと思ったけど、視線の先に赤い果実は1つも無い。

「これだけなのかな?」

お父さんが、トートミが生っていた木を見上げ頷く。

「見たところ、それ以外にトートミは無いな」

木の周りを見渡すが、落ちた形跡もない。

大きな木なのに、果実が1つ。

木は見つけられるけど、果実は見つけられないというのは、実に生りにくいからかな。

トートミをマジックバッグに入れると、罠を仕掛けた場所に向かう。

ちょっと滑ったけど、やっぱり少しずつ歩くコツを掴めて来たかも。

「駄目だな」

最後の罠を雪の中から引っ張り出したウルさんの言葉に、落胆してしまう。

やはり、全ての罠が雪に埋もれていた。

そして中は全て空。

さすがに、雪の量が多すぎたみたい。

「残念だったな」

「そうだね」

お父さんも少し期待していたのか、少し残念そうに見えた。

「カゴの強度については聞いていたけど、本当に強いカゴだな」

ウルさんが、罠に使われたカゴを両手で挟むと、ぐっと押さえて頷いた。

「そうだろう? その強度があれば、もう少し大きな罠にも使えそうだ」

やっぱり、罠を大きくして中型の動物を狩りたいのかな?

お父さんの楽しそうな表情に、笑みが浮かぶ。

良かった。

いつものお父さんだ。

これからの事に付いて話したのだけど、その時のお父さんが少し変だった。

何か、ぐっと気持ちを抑え込んでいるような。

それが心配だったけど、ウルさんといる時は大丈夫みたい。

ジナルさんは、その辺りも考えてウルさんを選んだのかな?